2016年11月30日

死神の浮力

『死神の浮力』
著:伊坂幸太郎(文春文庫)

娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。
「BOOK」データベースより


はい、こちらも療養期間中の一冊。
療養期間シリーズも残すところあと2冊です!!(笑)

前作『死神の精度』から随分経っての今作でしたので、結構忘れている設定もありましたが、概ね不自由なく読めたと思います。

長編なので、結構期待していたのですが……うーん、今作はちょっと私には合いませんでした……。
娘を誘拐の上殺害、というシリアスな設定に例の死神・千葉さんがやって来る……と言うのが違和感と言いますか、ちぐはぐ感がありまして。
描写はリアルで息苦しさがあり、重さもあって良かったのですが、その分、千葉さんが浮いてしまって……あ、“浮力”だからこれはこれでいいのかな??(爆)
本城に対するオチはとっても胸がすくものではありましたが、ちょっと非現実的過ぎて……。
千葉さんの存在自体が非現実そのものではあるのですが。
もう少し、リアルかファンタジーか、どちらかに寄せていてくれたら受け入れやすかったのかも。山野辺夫妻の心情がリアルだからこその違和感だったように思います。
そうして、そのチグハグ感が最後まで拭えなかったためか、途中で若干退屈さも感じてしまいました。

しかし山野辺父には胸を打たれました。

「俺は、そのことに気づいて、愕然としたんだ。愛おしい子供もいつか死ぬだなんて、そのことをまともに受け止められる親なんて、ほとんどいないはずだ」

もうこの台詞は泣きそうでした。
そして、山野辺父の恐怖の根源を理解出来た台詞でもありました。

「先に行って、怖くないことを確かめてくるよ」

この台詞にも胸を打たれました。
なんて優しくて温かくて、深い言葉なんだろうって。
山野辺父が非常に印象的な作品でした。
この心情は恐らく作者本人の心情なんでしょうね。
この二つの台詞の為だけに、読んで良かったと思えた作品でもありました。

あと、エピローグはとっても素敵でした。
これはとっても伊坂作品らしい、エピローグでした。
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2016年11月25日

ガソリン生活

『ガソリン生活』
著:伊坂幸太郎(朝日文庫)

のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ…!?車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。
「BOOK」データベースより


こちらは入院中に読んだ作品。
日がな一日寝ているだけなのに気持ちが悪くて本も読めない、というのは非常に無駄な時間に感じて苦痛でした。
その反動が出たせいか、とっても面白く読めました(爆)

とにかく緑デミ(ミドデミ)が可愛くて可愛くて!!
車買うなら緑デミにしようと決めました!(今現在そんな予定はありませんが……笑)
とにかく車達が可愛らしいんですよねぇ。
事故を起こすとショックを受けるとか、いつかは廃車にされる事を分かっているとか、所有者に肩入れしてしまうとか。
そんな風に思われてるって知ったら、ドライバーも慎重に運転するんじゃないかな。
あと、電車を尊敬してたり、自転車とは話せなかったり。
とにかく可愛くって、もうこの作品を読んだ人は車買い換えられないんじゃないかなって思いましたね。
少なくとも私は一生買い換えられなくなりそう……(笑)

肝心のストーリー自体は、いつもの伊坂氏らしい優しさと非現実さの溢れるミステリーでした。
……はて、ミステリー分類でいいのかな?? まあ何でもいいや。
細見氏はカッコイイし、玉田氏も何だかんだ言ってイイ人だし。
亨が非常にいいキャラで、兄との掛け合いが微笑ましかったです。良いバランスでした。
正直結構な分量なので、途中で中だるみとかしちゃうかな〜、と危惧していたのですが全く大丈夫でした。
テンポが良いのと、車達が可愛いのとでサラッと読めました。
これまでの伊坂作品とのリンクも少しだけあって、ニヤニヤしたりも出来ました(笑)

とにかくラストにグッときました。
物凄いハッピーエンドで。
緑デミ良かったねぇって(涙)
こんなハッキリとしたハッピーエンドも久しぶりに読んだ気がします。
幸せ一杯の読後感を味わえました♪
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2016年11月10日

オーリエラントの魔道師たち

『オーリエラントの魔道師たち』
著:乾石智子(創元推理文庫)

注文を受けて粘土をこね、魔法を込めた焼き物に焼く「陶工魔道師」、女たちの密かな魔法組織を描く「闇を抱く」、死体を用いる姿なきプアダンの魔道師の復讐譚「黒蓮華」、そして魔道ならざる魔道を操るもうひとりの“夜の写本師”の物語「魔道写本師」。四つの異なる魔法を操る魔道師たちの物語を収録。単行本収録作の一篇をさしかえて贈る、著者の人気シリーズ初の短篇集文庫化。
「BOOK」データベースより


“オーリエラントの魔道師”シリーズ初の短編集。
これまた療養中の一冊です(汗)
ではざっくり2作だけ。

『陶工魔導師』
陶工魔導師ってとっても面白い設定でした!
魔導というより、もっと地に足が着いているような、不思議な現実味を感じました。
サッパリとした勧善懲悪なオチも良かったですが、ヴィクトゥルスが常にしれっとしていたのも面白かったです。にゃんこにした仕打ちを考えるとタモルスには全く同上の余地はありませんしね。

『闇を抱く』
これが一番面白かったかもしれません。
不遇な中でもしっかり強かに自分の思うように行動している彼女達は本当に素敵でした。
使う魔法も、死に至らしめるというものでもないですし。
しかし……カリナの舅の食事エピソードは恐ろしく現実的で心胆寒からしめるエピソードでした……。ご飯は安心して食べたい……!(爆)
ロタヤの“叛乱”は非常に恰好良かったです。
ゾーイもとってもイイ味出てましたし、それぞれがしっかり自分の足で歩んでいるのが素敵でした。

* * * * *

他の2作も面白かったのですが、上記2作がとっても印象に残ったので。
両作とももっと続きを読んでみたいです。
次の文庫化は来年との事ですが、とっても楽しみです!!
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2016年10月20日

金色機械

『金色機械』
著:恒川光太郎(文春文庫)

時は江戸。ある大遊廓の創業者・熊悟朗は、人が抱く殺意の有無を見抜くことができた。ある日熊悟朗は手で触れるだけで生物を殺せるという女性・遙香と出会う。謎の存在「金色様」に導かれてやってきたという遙香が熊悟朗に願ったこととは―? 壮大なスケールで人間の善悪を問う、著者新境地の江戸ファンタジー。
「BOOK」データベースより


こちらも自宅療養期間中に読んだ作品です。
……まだあと4〜5作あります……。

恒川氏も無条件で購入しちゃう作家のお一人です。勿論、文庫に限りますが(苦笑)
が、今作はちょっと分からなかったです……。
分からないと言いますか、私にはあまり合わないと言った方が正しいのかも。
面白くなくはないけれど、心に何も残りませんでした……。
時系列を組み替えた構成にした意味(効果)もあまり感じられなくて、淡々と進んで淡々と終わったような印象で……。
ファンタジーと言うにはちょっと違和感があるような……むしろSFって言う方がしっくりする気がします。

気になったのは、金色様。
やっぱりC-3POなのかな〜。
途中からすっかりC-3POのイメージになってしまったので、それが悪かったのかもしれません(笑)
C-3POで想像すると何だか可笑しくって。
でもあんまりお喋りな方ではないようですし、動きも機敏そうなので、より進化したC-3POなのかも。
むしろ金色様の生い立ち(?)の方が気になって気になって。
続編でも外伝でもいいので書いて頂きたいです!

どうでもいいですが、金色様の“金色”って“キンイロ”って読むんですね。
タイトル含めてずーっと“コンジキ”って読んでました。
この文章もずーっと“コンジキ”で変換してました……あらら。
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2016年10月08日

この闇と光

『この闇と光』
著:服部まゆみ(角川文庫)

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた……はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!
「BOOK」データベースより


はい、こちらも自宅療養期間中に読んだ作品です。
上記期間中に読んだ作品があと何冊かあるので、早く書いておかないと忘れてしまいそうなのに、この遅さ……(爆)

半年位前に本屋さんで平積みにされていて、大々的に宣伝されていたので、思わず購入。
正直、こちらの作家さんのお名前さえ知りませんでした……(汗)

結論から言うと、出版当時に読みたかった作品でした。
この作品自体がどうこうではなく、私が勝手に時機を逸した感がありました……非常に勿体なかったです!
今ではこの手の手法の作品が溢れていて、どうしても目新しさに欠けてしまって。
結末もそれほど予想外でもありませんでしたし……。
刊行当時(98年だそうです)だったら、ドキドキしながら読めたと思うんです。ああ勿体ない。

登場人物や心理描写などは翻訳小説のような趣もあり、ライトだけれど情感のある文章は落ち着きがあってとても読みやすかったです。ちょっと昔の日本文学っぽい感じと言うか。
ストーリーはこんな歳と時代なので上述の通りでしたが、細かな描写が美しく目の前に鮮明に浮かぶようでした。
長田弘氏の詩(?)がピッタリだな、と。
"人は、ことばを覚えて、幸福を失う。 そして、覚えたことばと おなじだけの悲しみを知る者になる。"
レイアは正に光を得て幸福を失い、悲しみも知って、そうしてもう二度と悲しみを知る以前と同じ幸福は得られない訳で。

久しぶりに鮮やかで印象に残る作品でした。
そうそう、乙一氏の『華歌』も思い出しました。氏の作品の中で一番大好きな短編なんですが、トリック(?)的に似たような感じに思えたのです。
やっぱり、何故もっと早くに読まなかったのか悔やまれます……!!

これを機に、他の作品も読んでみたくなりました!
本当に蛇足ですが、もう"王女・レイア"と言われたら……彼の惑星オルデランのお姫様が浮かんでしまって。わ、私だけではないハズ!!(笑)
posted by ミクロン at 22:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする