2017年07月07日

紐結びの魔導師

『紐結びの魔導師』
著:乾石智子(創元推理文庫)

紐結びの魔道師リクエンシス。紐をさまざまに結ぶことで、幸福をからめとるかと思えば、巧みに罠をしかけもする。あるときは腹に一物ある貴石占術師を煙に巻き、あるときは炎と大地の化け物退治に加勢し、またあるときはわがままな相棒の命を救わんとし、果ては写本の国パドゥキア目指し砂漠を横断する。コンスル帝国衰退の時代、紐結びの魔道師の活躍を描く好評シリーズ最新作。
「BOOK」データベースより


やっと読めました〜!
前作『オーリエラントの魔道師たち』の読後、あまりに過去作品を失念しているので、全作読み返してから読みました。
すると懐かしい面々も登場していて嬉しくなりました。
とりあえず、3作だけ感想を。

『紐結びの魔道師』
カッシの好感度が上がるお話(笑)
『夜の写本師』ではそれほど印象には残っていませんでしたが、こんなに憎めない人物だったんですねぇ。
その後〈炎の玉髄〉は霧の町へ届いたのかが気になるところ。
どこかにそんな記述があったのを私が見落としているのかもしれませんが。

『子孫』
割とありがちな話ですが、好みのお話です。
過去を振り返る切なさ、の様なものが非常に好きでして。
それも、振り返るほどの過去なぞ無いような時分からだったりするので、一体何が元なのかは分からないのです。感傷に浸るのが好きなのかもしれません。
そんな好みにピッタリのお話でした。
でも、こういった場合、一体どのあたりで諦めがつくのか、といつも疑問に思います。
子供や孫あたりまでは近いですし、愛着も喪失感も大きいだろうと思うのですが、ひ孫あたりになると、ある程度諦めがついたり、離れたり忘れたりする事もできるのかなって。
その辺りももう少し書いて頂きたかったなぁ。

『魔導師の憂鬱』
こちらも『子孫』に似たような、でも未来に希望を見出すお話。
今度はケルシュが登場。
ケルシュってキアルスの記憶を持っているんですよね。
むむむ、こんがらがりそうだけど面白い。
それにしても魔導師の寿命ってどれ位あるんでしょう。力の強さによって違うのかな。

* * * * *

今作は派手な事件が起こったりする訳でもなく、リクエンシスの人生を垣間見るスタイルでしたが、それもまた細やかで面白かったです。
ただ、どうも時系列がこんがらがってしまっているので、次の文庫新刊までには整理しておきたいところです(苦笑)
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2017年03月07日

旅者の歌

『旅者の歌 始まりの地』
『旅者の歌 魂の地より』
著:小路幸也(幻冬舎文庫)

【始まりの地】
この世界の神は人と野獣とを分けて創ったが、稀に人から野獣に換身し二度と戻れない者もいる。ある日、ニィマールの兄と姉、婚約者が、人間の心を残したまま野獣に換身してしまう。だが誰も辿り着いたことのない果ての地に行けば、三人を人間に戻すことができると聞いた少年は、一縷の望みを胸に試練の旅に出た――。一大エンタメ叙事詩、開幕!

【魂の地より】
旅とは、愛と絆を試すもの。兄姉と許嫁を人間に戻すため仲間と共に試練の旅に出たニィマールは、その名を捨てリョシャと名乗った。行く手を阻むのは、死が蔓延する冬山、見た事もない民族、そして強大すぎる敵。一歩踏み出すごとに故郷の安寧は遠ざかる。苦難の旅路の果てに彼らを待つのは歓喜か、絶望か。興奮と感動のエンタメ叙事詩、完結!
「BOOK」データベースより


療養期間中に読んだシリーズ、最後の1冊。
正確には2冊ですが、まとめて購入&一気読みしたので1冊換算です。
もう半年以上前になるので、ちょっと頼りない感想です……(爆)

前々から気になっていた作品で、2冊まとめて電子版で購入しました。
第三者の語り口のせいか全体的にやや平坦な印象ですが、世界観や設定はしっかりとしていて惹き込まれました。きちんとオチまで考えてある感もあり、スルスルと読めました。
いくつもの箱庭のような国々や多様な住人。
ちょっぴり『ガリバー旅行記』などを思い出したりしつつ、でも全体的には『指輪物語』風な印象でした。
スィールとルーラはもうアスラン(『ナルニア国物語』)にしか見えなかったですが(笑)

主人公達はどうも淡泊な印象でした。
淡泊というか、お人形っぽい感じかな。
トゥールとティアラなんて、換身を滅茶苦茶素直に受け入れてて、こちらがちょっと戸惑いました。
もう少し内面の葛藤やら何やら描いて欲しかったです。そしたらもう少し人間味が出てたのになぁって。
でもトゥールはカッコイイし、ジェイラは可愛いらしかったです。

ともあれ、諸々の世界の謎の答えに、大きな意図が見え隠れする感じがツボで、ワクワクしながら読めたのでした。デストピアのような。

……が。
未完じゃねーかぁぁぁっ(。>Д<。)

内容紹介でクッキリハッキリ“完結”って書いてあるのにぃぃぃ!!!
WJの打ち切り作品的なラストで、悪い意味で度胆を抜かれて放心してしまいました……。
“ここからまた新たな旅が始まる!!”って感じの(苦笑)
結局解決したのは換身だけ……。
後に作者ご本人のHPにて簡単な解説を見つけましたが……え、本当にこれで完結ですか??
とりあえず今後出版は出来なくなったので、そこまで書いてあったもので無理やり完結させたのでしょうか……??
この方の作品は初めてだったので勝手が分からず、余計にモヤモヤ。
この作者さんの作品はこういった終わり方も多いのでしょうか……。

と、面白かっただけにガッカリ感が凄い作品でもありました。
もう二次創作で構わないので、どなたか完結編書いて下さいませんかね。
あまりに勿体ない!!(涙)
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2017年01月15日

すえずえ

『すえずえ』
著:畠中恵(新潮文庫)

若だんなの許嫁が、ついに決まる!?幼なじみの栄吉の恋に、長崎屋の危機…騒動を経て次第に将来を意識しはじめる若だんな。そんな中、仁吉と佐助は、若だんなの嫁取りを心配した祖母のおぎん様から重大な決断を迫られる。千年以上生きる妖に比べ、人の寿命は短い。ずっと一緒にいるために皆が出した結論は。謎解きもたっぷり、一太郎と妖たちの新たな未来が開けるシリーズ第13弾。
「BOOK」データベースより


しゃばけシリーズ文庫新刊です。
今作もいつもと変わらず安心して読めました。
それぞれ少しずつ。

『栄吉の来年』
栄吉は若だんなと良い対比だな〜、と思います。
菓子修行に出たり、許嫁が出来たり。
でも、それもまだもう少し先の話、と言うのがわずかながら救いな気がします。

『寛朝の明日』
猫達が可愛い!!
もう猫に目がないんです。猫アレルギーにも関わらず。
俄然、踊場駅行ってみたくなりました!!

『おたえの、とこしえ』
おたえの心情はとってもよく分かります。
いつまでも同じ日常が続いて欲しい、という。
でもそれって、続かないって知ってるから、分かっているから思うんですよね……。

『仁吉と佐助の千年』
今巻ではこのお話が一番好きです。
若だんなの許嫁、以前登場したかなめの存在が忘れ難くて、でも現在では出会ってもいないので、どうなるんだろうと思っていましたが……成程、円満な解決方法で来ましたねぇ。
於りんちゃんも勿論いいですけれど、ちょっと切ない気もします。
そして仁吉の出した答え。
こちらは既刊の『えどさがし』でその後が描かれていましたが、あの『えどさがし』はもう、しゃばけシリーズで一番切なくて一番好きな話です。
仁吉も佐助も妖達も、どこまで若だんなを待つんだろうって。
おぎんはどこで諦めが付いたんだろう。鈴君と夫婦になれたから、それ以後は諦められたのかな。
その辺り、いつか読みたいなぁ。

『妖達の来月』
こちらもまたなんともやるせないお話でした。
夢があっていいな、と思う反面、現実的ではないと思ってしまったり。
永続的に何かを所有する、というのは非常に難しいだろうな、と思うので。
でも、これまで“自分の物”を何一つ持たなかった彼らは、そんな事は分かり切っているんでしょうね。
そこがまた切ないな〜って。妖達のはしゃぎっぷりが可愛らしい分、尚更。
山童は少しだけ狐者異(こわい)に似ているなと思いました。
可哀想だけれど、どうにもしてやれない所も。

* * * * *

今巻は、将来へ思いを巡らせ一歩踏み出す巻でした。
ほんの少しずつ未来へ向かって変化していくのは淋しくも切なくもあります。
この無常感が畠中氏の持ち味でもあるのですが、たまには能天気で他愛もない妖達との日常を読んでみたくなります。

……“切ない”連発し過ぎですね。語彙力が欲しい……。
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2017年01月11日

ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版

『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版』
著:J.K.ローリング/ジョン・ティファニー&ジャック・ソーン
訳:松岡祐子(静山社)

8番目の物語。19年後。『ハリー・ポッターと死の秘宝』での戦いから19年が経ち、父親となったハリーが2人目の子どもをホグワーツ魔法学校へと送り出したその後の物語です。ハリー・ポッターとして生きるのはもちろんたいへんなことだったのですが、その後のハリーも決して楽ではありません。今やハリーは、夫として、また3人の子を持つ父親として、魔法省の激務に押しつぶされそうな日々をすごしています。ハリーがすでにけりをつけたはずの過去と取り組まなければならない一方、次男のアルバスは、望んでもいない“ハリー一家の伝説”という重圧と戦わなければなりません。過去と現実は不吉にからみあい、父も子も痛い真実を知ることになります。
「BOOK」データベースより


やっと読めました〜!
ハリポタシリーズ新刊。脚本ではありますが。
正直なところ、ハリポタシリーズは好きですが、大好きって程ではないのです(爆)
とはいえ、かつては原作は全巻所持していましたし、映画版は全て劇場で観ている程度には好きなシリーズです。『ファンタビ』も観たいな〜とは思ってはいるのですが……なかなか(>_<)
とまぁ、そんな程度のファンです。
しかしながら今作は非常に面白かったです!!
これまでのハリポタシリーズは全て手放してしまったので、設定等の記憶が結構あやふやだったりしてますが、ザッと感想を。

やっぱり彼らのその後を知る事が出来たのが非常に嬉しかったです。
皆ある程度丸くなりはしたものの、基本的にはあまり変わらないのですが、ロンの変わらなさにはホッとさせられました(笑)
ドラコとジニーが一番大人になって落ち着いたような印象。
かつてのシリーズではハリー以外の人物の心理描写ってあまり無かった気がするので、今作ではドラコの好感度が非常に上がりました。
前7作では割と単純な行動原理しか描写されていなかった(と、記憶しています)ので、人物像にあまり厚みを感じられなかったのです。ごく定番の、主人公に対する悪役って程度で。
ですが今作でようやく彼の内面の一部が理解できたような気がします。
逆転時計の件は非常に感慨深いシーンでした。
しかし……アストリアって……どんな人でしたっけ……??(爆)

そしていくつもの“もしも”の未来。
これらも種々多様で面白かったです。
中でも一番切なかったのは、ネビルがナギニを殺せなかった世界の未来。
ハーマイオニーがやたらカッコイイし、ロンとの最後も、スネイプの最後の台詞も、どちらもとっても切なかったけれど、素敵でもありました。

今回はセドリックがキーパーソンなのですが、彼は人気があったのかな??
ヴォルデモートに殺害されたって以外にあまり印象に残っていなかったもので……(汗)
それでもアルバスとスコーピウスが彼と別れるシーンはやりきれないものでした。

新キャラではスコーピウスが非常にイイです。
アルバスはハリーそっくりで、ちょっと好きになれなかった分、余計に。
真っ当な子(笑)で非常に好感が持てました。むしろ主人公だと思います。
ローズに対するポジティブさもイイ!!
よくドラコの子がこんなに素敵に育ったなぁ、と思ってしまいましたが、アストリアのお陰かな。ドラコ自身の成長も。
そう思うとますますアストリアが気になるなぁ。
後日発売になるらしい愛蔵版では是非そのあたりも加筆をお願いしたいところです!!

そうそう、ホグワーツ特急の車内販売魔女が非常〜に良かったです!
何あれ、怖いわ〜(笑)
映画とかでは普通だっただけに、余計にインパクトがありましたね。もう少し詳しく読みたかったなぁ。

こんなに面白い続編なのに、決して映画化出来ないネタというのも凄いですね。勿体ない!
勿論、キャスト総とっかえなら可能ですが、それはさすがにハリポタファンが許さないでしょうし(笑)
これを読んだら、やっぱり何としても『ファンタビ』は観に行かなきゃ! という気になりました!
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2016年12月24日

本格小説

『本格小説 上・下』
著:水村美苗(新潮文庫)

【上巻】
ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。

【下巻】
生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような……。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。
「BOOK」データベースより


まだまだ療養期間中の一冊。
かれこれ半年近く経っているので、感想も忘れてしまいそう……(汗)

凄く面白いとも言えず、かといってつまらないとも言えない微妙な作品でした。
何年も前に購入して以来、積読のままだったのですが、折角の機会という事で一気読み。

何と言うか……ストーリー自体は単純で、ごくありきたりなお話に感じました。
が、読ませる力が凄かったです。取り立てて文章が巧いという風には感じられませんでしたが、読ませる。
恩田陸氏の登場人物の会話のような、とりとめのない会話でも充分に面白い書き方、と言いますか。
地文そのものが飽きの来ない読み味でした。なので大半は苦も無く読めました。
序盤はダメでしたが(爆)
特に“本格小説が始まる前の長い長い話”という章。
冗長過ぎると言うか、読後も果たしてこの章が必要だったのかが疑問でした。
ようやく面白くなってきたな、と思えたのが“小田急線”から(笑)
でも投げ出さずに辿り着いたのは、やっぱり文章が魅力的だったから……かなと。

登場人物がイマイチだったかな、とは思いました。
もう少しそれぞれの心理描写が欲しかった気がします。
東太郎なんて主要人物なのに、正直薄気味悪い印象しか残らなかった……(爆)
妄執に囚われていると言うか、狂信的と言うか……。
この辺りは『嵐が丘』を読めって事でしょうかね。恥ずかしながら未読なのです……(>_<;)

読み味は昔の日本文学を彷彿とさせるものでした。
さほど面白いとは思えなかったのですが、妙に印象に残った作品です。
何年かしたらまた読んでみたくなりそうな、そんな感じです。
posted by ミクロン at 02:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする