2016年12月24日

本格小説

『本格小説 上・下』
著:水村美苗(新潮文庫)

【上巻】
ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。

【下巻】
生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような……。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。
「BOOK」データベースより


まだまだ療養期間中の一冊。
かれこれ半年近く経っているので、感想も忘れてしまいそう……(汗)

凄く面白いとも言えず、かといってつまらないとも言えない微妙な作品でした。
何年も前に購入して以来、積読のままだったのですが、折角の機会という事で一気読み。

何と言うか……ストーリー自体は単純で、ごくありきたりなお話に感じました。
が、読ませる力が凄かったです。取り立てて文章が巧いという風には感じられませんでしたが、読ませる。
恩田陸氏の登場人物の会話のような、とりとめのない会話でも充分に面白い書き方、と言いますか。
地文そのものが飽きの来ない読み味でした。なので大半は苦も無く読めました。
序盤はダメでしたが(爆)
特に“本格小説が始まる前の長い長い話”という章。
冗長過ぎると言うか、読後も果たしてこの章が必要だったのかが疑問でした。
ようやく面白くなってきたな、と思えたのが“小田急線”から(笑)
でも投げ出さずに辿り着いたのは、やっぱり文章が魅力的だったから……かなと。

登場人物がイマイチだったかな、とは思いました。
もう少しそれぞれの心理描写が欲しかった気がします。
東太郎なんて主要人物なのに、正直薄気味悪い印象しか残らなかった……(爆)
妄執に囚われていると言うか、狂信的と言うか……。
この辺りは『嵐が丘』を読めって事でしょうかね。恥ずかしながら未読なのです……(>_<;)

読み味は昔の日本文学を彷彿とさせるものでした。
さほど面白いとは思えなかったのですが、妙に印象に残った作品です。
何年かしたらまた読んでみたくなりそうな、そんな感じです。
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2016年11月30日

死神の浮力

『死神の浮力』
著:伊坂幸太郎(文春文庫)

娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。
「BOOK」データベースより


はい、こちらも療養期間中の一冊。
療養期間シリーズも残すところあと2冊です!!(笑)

前作『死神の精度』から随分経っての今作でしたので、結構忘れている設定もありましたが、概ね不自由なく読めたと思います。

長編なので、結構期待していたのですが……うーん、今作はちょっと私には合いませんでした……。
娘を誘拐の上殺害、というシリアスな設定に例の死神・千葉さんがやって来る……と言うのが違和感と言いますか、ちぐはぐ感がありまして。
描写はリアルで息苦しさがあり、重さもあって良かったのですが、その分、千葉さんが浮いてしまって……あ、“浮力”だからこれはこれでいいのかな??(爆)
本城に対するオチはとっても胸がすくものではありましたが、ちょっと非現実的過ぎて……。
千葉さんの存在自体が非現実そのものではあるのですが。
もう少し、リアルかファンタジーか、どちらかに寄せていてくれたら受け入れやすかったのかも。山野辺夫妻の心情がリアルだからこその違和感だったように思います。
そうして、そのチグハグ感が最後まで拭えなかったためか、途中で若干退屈さも感じてしまいました。

しかし山野辺父には胸を打たれました。

「俺は、そのことに気づいて、愕然としたんだ。愛おしい子供もいつか死ぬだなんて、そのことをまともに受け止められる親なんて、ほとんどいないはずだ」

もうこの台詞は泣きそうでした。
そして、山野辺父の恐怖の根源を理解出来た台詞でもありました。

「先に行って、怖くないことを確かめてくるよ」

この台詞にも胸を打たれました。
なんて優しくて温かくて、深い言葉なんだろうって。
山野辺父が非常に印象的な作品でした。
この心情は恐らく作者本人の心情なんでしょうね。
この二つの台詞の為だけに、読んで良かったと思えた作品でもありました。

あと、エピローグはとっても素敵でした。
これはとっても伊坂作品らしい、エピローグでした。
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2016年11月25日

ガソリン生活

『ガソリン生活』
著:伊坂幸太郎(朝日文庫)

のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ…!?車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。
「BOOK」データベースより


こちらは入院中に読んだ作品。
日がな一日寝ているだけなのに気持ちが悪くて本も読めない、というのは非常に無駄な時間に感じて苦痛でした。
その反動が出たせいか、とっても面白く読めました(爆)

とにかく緑デミ(ミドデミ)が可愛くて可愛くて!!
車買うなら緑デミにしようと決めました!(今現在そんな予定はありませんが……笑)
とにかく車達が可愛らしいんですよねぇ。
事故を起こすとショックを受けるとか、いつかは廃車にされる事を分かっているとか、所有者に肩入れしてしまうとか。
そんな風に思われてるって知ったら、ドライバーも慎重に運転するんじゃないかな。
あと、電車を尊敬してたり、自転車とは話せなかったり。
とにかく可愛くって、もうこの作品を読んだ人は車買い換えられないんじゃないかなって思いましたね。
少なくとも私は一生買い換えられなくなりそう……(笑)

肝心のストーリー自体は、いつもの伊坂氏らしい優しさと非現実さの溢れるミステリーでした。
……はて、ミステリー分類でいいのかな?? まあ何でもいいや。
細見氏はカッコイイし、玉田氏も何だかんだ言ってイイ人だし。
亨が非常にいいキャラで、兄との掛け合いが微笑ましかったです。良いバランスでした。
正直結構な分量なので、途中で中だるみとかしちゃうかな〜、と危惧していたのですが全く大丈夫でした。
テンポが良いのと、車達が可愛いのとでサラッと読めました。
これまでの伊坂作品とのリンクも少しだけあって、ニヤニヤしたりも出来ました(笑)

とにかくラストにグッときました。
物凄いハッピーエンドで。
緑デミ良かったねぇって(涙)
こんなハッキリとしたハッピーエンドも久しぶりに読んだ気がします。
幸せ一杯の読後感を味わえました♪
posted by ミクロン at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月10日

オーリエラントの魔道師たち

『オーリエラントの魔道師たち』
著:乾石智子(創元推理文庫)

注文を受けて粘土をこね、魔法を込めた焼き物に焼く「陶工魔道師」、女たちの密かな魔法組織を描く「闇を抱く」、死体を用いる姿なきプアダンの魔道師の復讐譚「黒蓮華」、そして魔道ならざる魔道を操るもうひとりの“夜の写本師”の物語「魔道写本師」。四つの異なる魔法を操る魔道師たちの物語を収録。単行本収録作の一篇をさしかえて贈る、著者の人気シリーズ初の短篇集文庫化。
「BOOK」データベースより


“オーリエラントの魔道師”シリーズ初の短編集。
これまた療養中の一冊です(汗)
ではざっくり2作だけ。

『陶工魔導師』
陶工魔導師ってとっても面白い設定でした!
魔導というより、もっと地に足が着いているような、不思議な現実味を感じました。
サッパリとした勧善懲悪なオチも良かったですが、ヴィクトゥルスが常にしれっとしていたのも面白かったです。にゃんこにした仕打ちを考えるとタモルスには全く同上の余地はありませんしね。

『闇を抱く』
これが一番面白かったかもしれません。
不遇な中でもしっかり強かに自分の思うように行動している彼女達は本当に素敵でした。
使う魔法も、死に至らしめるというものでもないですし。
しかし……カリナの舅の食事エピソードは恐ろしく現実的で心胆寒からしめるエピソードでした……。ご飯は安心して食べたい……!(爆)
ロタヤの“叛乱”は非常に恰好良かったです。
ゾーイもとってもイイ味出てましたし、それぞれがしっかり自分の足で歩んでいるのが素敵でした。

* * * * *

他の2作も面白かったのですが、上記2作がとっても印象に残ったので。
両作とももっと続きを読んでみたいです。
次の文庫化は来年との事ですが、とっても楽しみです!!
posted by ミクロン at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月20日

金色機械

『金色機械』
著:恒川光太郎(文春文庫)

時は江戸。ある大遊廓の創業者・熊悟朗は、人が抱く殺意の有無を見抜くことができた。ある日熊悟朗は手で触れるだけで生物を殺せるという女性・遙香と出会う。謎の存在「金色様」に導かれてやってきたという遙香が熊悟朗に願ったこととは―? 壮大なスケールで人間の善悪を問う、著者新境地の江戸ファンタジー。
「BOOK」データベースより


こちらも自宅療養期間中に読んだ作品です。
……まだあと4〜5作あります……。

恒川氏も無条件で購入しちゃう作家のお一人です。勿論、文庫に限りますが(苦笑)
が、今作はちょっと分からなかったです……。
分からないと言いますか、私にはあまり合わないと言った方が正しいのかも。
面白くなくはないけれど、心に何も残りませんでした……。
時系列を組み替えた構成にした意味(効果)もあまり感じられなくて、淡々と進んで淡々と終わったような印象で……。
ファンタジーと言うにはちょっと違和感があるような……むしろSFって言う方がしっくりする気がします。

気になったのは、金色様。
やっぱりC-3POなのかな〜。
途中からすっかりC-3POのイメージになってしまったので、それが悪かったのかもしれません(笑)
C-3POで想像すると何だか可笑しくって。
でもあんまりお喋りな方ではないようですし、動きも機敏そうなので、より進化したC-3POなのかも。
むしろ金色様の生い立ち(?)の方が気になって気になって。
続編でも外伝でもいいので書いて頂きたいです!

どうでもいいですが、金色様の“金色”って“キンイロ”って読むんですね。
タイトル含めてずーっと“コンジキ”って読んでました。
この文章もずーっと“コンジキ”で変換してました……あらら。
posted by ミクロン at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする