2017年11月21日

明治・妖モダン

『明治・妖モダン』
著:畠中恵(朝日文庫)

「江戸が終わって20年。妖たちがそう簡単にいなくなると思うかい?」モダン銀座の派出所に勤める巡査・原田と滝の元へは、瞬く間に成長する少女や鎌鼬に襲われた噂など、不思議な厄介ごとばかり持ち込まれて……!?ゾクゾク妖怪ファンタジー、第1弾。
「BOOK」データベースより


“しゃばけ”と“若様組まいる”の中間のような作品でした。
“若様組まいる”のように少しシビアな世で、登場人物の悪感情も強めに描かれていて。
それでいて、妖達が主役。

“煉瓦街の雨”のオチは雰囲気が出ていて良かったですし、“花乃が死ぬまで”は“しゃばけ”寄りの優しさと切なさのある話でした。
ただ、どれもそれなりに面白かったのですが、若干マンネリ気味の印象でした。
どうしても“しゃばけ”と比べてしまう、というのもありますけれど、登場人物の個性がどうも定型化しているような。
もう少しそれぞれの背景や心情が描かれてくるといいなぁと思いました。

ちょっぴり期待したのは、明治の世を生きる“しゃばけ”メンバーもチラッと出てくるかな、と。
充分あり得そうですが、そうなると作品の雰囲気がチグハグになる気もしますね……うーん。
でも今後に期待してます!
posted by ミクロン at 19:00 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

ロボット・イン・ザ・ガーデン

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』
著:デボラ・インストール
訳:松原葉子

AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。弁護士として活躍する妻エイミーとは対照的に、親から譲り受けた家で漫然と過ごす三四歳のベン。そんな夫に妻は苛立ち夫婦は崩壊寸前。ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけた旧型ロボットのタングを発見。他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、作り主を探そうと、アメリカへ。中年ダメ男とぽんこつ男の子ロボットの珍道中が始まった……。タングの愛らしさに世界中が虜になった、抱きしめたいほどかわいくて切ない物語。
「BOOK」データベースより


完全に、表紙と設定に騙された作品でした(爆)
以下、ちょっと酷い感じです。ごめんなさい!

タングの可愛らしさは十二分に解るのですが、特筆すべきはその可愛らしさだけでした。

大筋は、タングがどこから来たのかを探す旅なのですが、先を予想したくなるような謎もワクワクも無く、淡々と進むロードムービー。
どのエピソードも目新しさに欠け、どこかで読んだ(観た)事のあるような展開が続き、ようやくタングと製作者が再会するものの、やっぱり意外性のない展開で、長い無駄足を見せつけられた気分になりました。

旅から帰った後は、主人公夫婦のドラマへと変遷。
主人公の奥さんであるエイミーは、アメリカの作品らしい(と言っては偏見になりますが)女性像で心底うんざり。
でも、結構酷い事してたりするのに、結局エイミーの都合の良い形のハッピーエンドになってしまったのにも、モヤモヤ。
タングとエイミー、どちらかに焦点を当てて掘り下げた方が面白くなったように感じました。
SFとしても、ヒューマンドラマとしても、どうにも中途半端な印象です。
タングは本当に可愛いんですけれどねぇ。

まだまだ本を見る目が養われていないなと、思い知らされた作品でした。
posted by ミクロン at 22:00 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月01日

天盆

『天盆』
著:王城夕紀(中公文庫)

蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」を制した者。人々は立身を目指し研鑽に励むが、長い間、平民から征陣者は出ていない。そんな中、貧しい十三人きょうだいの末子・凡天が激戦を勝ち進み――少年が歴史に挑むとき、国の運命もまた動き始める。圧倒的疾走感で描き出す放熱ファンタジー!
「BOOK」データベースより


全く存じ上げない作家さんだったのですが、店頭でタイトルに惹かれて何気なく手に取り、1〜2ページ試読してみて、やっぱり妙に惹かれたので購入しました。

久々の大当たりの作品でした。
もう絶賛しかないです。
世界観も、ストーリーも、登場人物も。
夢中で読んで、文字が読み辛くなってようやく周囲が暗くなった事に気付いて電気を点ける、なんて事は本当に久しぶりでした。

“天盆”というゲームが中心となったお話なのですが、その描写が素晴らしかったです。
ルールだの駒の動きだのを、くだくだと説明されでもしていたらウンザリしたと思いますが、おおよそ将棋のようなゲームであろうと推測できる程度の説明に留めてあり、その辺りの匙加減が大変巧く、何となく理解した気になれたほど。
例えるなら、碁はサッパリにも関わらず、物凄く楽しく読めた『ヒカルの碁』のような。

登場人物達もキチンと個性が描かれていて、家族が多い割に、無駄な登場人物はいないように感じました。
凡天は捉えどころがないのですが、たまに話すと子供らしくて可愛い。終盤の十偉とのシーンが特に可愛らしくって。
何だかんだで十偉も非常に人間らしくて素敵でしたし、一龍は貫録があって頼もしい。いつも一緒の三姉妹は口が達者で微笑ましかったですし、二秀も捻くれたりしない努力家で応援したくなりました。六麗はちょっと不遇で可哀想でしたが。
個人的には永涯が好きです。こういう高潔な人物は見ていて(読んでいて)とても清々しい気持ちになれます。
少勇は本当にカッコイイ奴でした!!
人として憧れるのは、こういう人だなぁって。

ストーリー自体は王道な展開なのですが、登場人物達の個性と早いテンポで、全く飽くことなく、むしろ完全に引き摺りこまれました。
簡潔明朗な文体でセンテンスも短く、“天盆”の対局中の息詰まるような緊迫感と高揚感、そして“天盆”の局面の大きな流れがヒシヒシと感じられました。こういう心理的な空気感の表現は、小説ならではの表現だなぁと改めて感じました。
細かなエピソードで曖昧な書き方のまま、といったところもいくつかあるのですが、それも些末な事と許容できる程度でした。脱臼とか封手とか。

結末も素晴らしかったです。
好みは分かれるであろう結末だとは思いますが、ちゃんと世界観が保たれたままの終わり方だと感じました。
勿論彼らのその後は非常に気になりますが、あの勢いのまま、あの熱狂のまま締め括られたからこそ、胸一杯の余韻になったのだと思います。
そして最後の一文の泣けること、笑えることと言ったら。

久しぶりに読書の楽しさを心から味わえた作品でした。
幸福感で一杯です。
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2017年07月17日

空棺の烏

『空棺の烏』
著:阿部智里(文春文庫)

人間の代わりに八咫烏の一族が住まう世界「山内」のエリート武官を養成する全寮制の学校「勁草院」に入学した少年、雪哉。次の日嗣の御子たる若宮派と巻き返しを図る兄宮派との間で激化する対立の中で次々と起こる事件に雪哉は立ち向かう。競争の中で少年たちは友情を深めていく――。八咫烏シリーズの第四弾。
「BOOK」データベースより


前作も面白かったですが、今作も尚良かったです。
段々と面白くなっている印象。今巻も電子版で購入したのですが、紙版で買い直すべきかまだ悩み中です(苦笑)

今作を一言でまとめると、雪哉無双の巻(笑)
作者の思い入れが雪哉に変わったような印象を受けるくらいに、とにかくひたすら雪哉無双で、ちょっと引いてしまいました(爆)
特に、終盤の勁草院上層部、尚鶴達を糾弾するシーンはちょっと若さが出たような印象を受けました。
雪哉の言い分も正論ではあるのでしょうが、あまりに一方的に過ぎる気がしまして。
とはいえ、あまりに公正キャラでも違和感があるので、ここは雪哉の真情が吐露されたという事なのでしょう。今後の成長に期待です。
その流れで、清賢と翠寛はとってもいい先生でした。
翠寛はスネイプ先生(『ハリポタ』シリーズ)っぽい人(八咫烏)でした。
どちらも教わりたく思う人物(八咫烏)です。

今作で一番良かったのは茂丸ですね〜。
一番人間(八咫烏)が出来てる。そして可愛い(笑)
次回以降も是非活躍して頂きたいなぁ。

前作から期待された猿との対決は、またも持越し。
でも猿にも対話可能な猿がいる様子。
対話不可の方が不気味で良かったのになぁ、と思いつつ。
小猿の「八咫烏を食べると馬鹿にる」と言う台詞は興味深いですね。

決着はどうやら次々巻の模様。
このまま進むと本当に1巻だけ外伝になってしまうのが気にかかりますが、次巻、次々巻で浜木綿は活躍するのかな??
来年の文庫刊行が待ち遠しいです。
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2017年07月07日

紐結びの魔導師

『紐結びの魔導師』
著:乾石智子(創元推理文庫)

紐結びの魔道師リクエンシス。紐をさまざまに結ぶことで、幸福をからめとるかと思えば、巧みに罠をしかけもする。あるときは腹に一物ある貴石占術師を煙に巻き、あるときは炎と大地の化け物退治に加勢し、またあるときはわがままな相棒の命を救わんとし、果ては写本の国パドゥキア目指し砂漠を横断する。コンスル帝国衰退の時代、紐結びの魔道師の活躍を描く好評シリーズ最新作。
「BOOK」データベースより


やっと読めました〜!
前作『オーリエラントの魔道師たち』の読後、あまりに過去作品を失念しているので、全作読み返してから読みました。
すると懐かしい面々も登場していて嬉しくなりました。
とりあえず、3作だけ感想を。

『紐結びの魔道師』
カッシの好感度が上がるお話(笑)
『夜の写本師』ではそれほど印象には残っていませんでしたが、こんなに憎めない人物だったんですねぇ。
その後〈炎の玉髄〉は霧の町へ届いたのかが気になるところ。
どこかにそんな記述があったのを私が見落としているのかもしれませんが。

『子孫』
割とありがちな話ですが、好みのお話です。
過去を振り返る切なさ、の様なものが非常に好きでして。
それも、振り返るほどの過去なぞ無いような時分からだったりするので、一体何が元なのかは分からないのです。感傷に浸るのが好きなのかもしれません。
そんな好みにピッタリのお話でした。
でも、こういった場合、一体どのあたりで諦めがつくのか、といつも疑問に思います。
子供や孫あたりまでは近いですし、愛着も喪失感も大きいだろうと思うのですが、ひ孫あたりになると、ある程度諦めがついたり、離れたり忘れたりする事もできるのかなって。
その辺りももう少し書いて頂きたかったなぁ。

『魔導師の憂鬱』
こちらも『子孫』に似たような、でも未来に希望を見出すお話。
今度はケルシュが登場。
ケルシュってキアルスの記憶を持っているんですよね。
むむむ、こんがらがりそうだけど面白い。
それにしても魔導師の寿命ってどれ位あるんでしょう。力の強さによって違うのかな。

* * * * *

今作は派手な事件が起こったりする訳でもなく、リクエンシスの人生を垣間見るスタイルでしたが、それもまた細やかで面白かったです。
ただ、どうも時系列がこんがらがってしまっているので、次の文庫新刊までには整理しておきたいところです(苦笑)
posted by ミクロン at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする