2018年08月23日

過ぎ去りし王国の城

『過ぎ去りし王国の城』
著:宮部みゆき(角川文庫)

中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!
「BOOK」データベースより


物凄く久しぶりの宮部みゆき作品。
本屋で平積みにされていて、表紙に惹かれて結局買ってしまいました。
宮部みゆき作品は『淋しい狩人』で出会ったのが最初で、その後『魔術はささやく』、『ブレイブ・ストーリー』とこの作品で4作目になります。
『淋しい狩人』は大好きですが、『ブレイブ・ストーリー』で距離を置くことを決めたのでした(爆)
理由は感想と一緒に追々……。

設定はとっても私好み。
絵の中に入るだなんて、なんて王道設定!
誰しも一度は憧れた事があるのでは。
そんな訳で、序盤はかなり楽しめました。
絵の中に入るにはアバターが必要、それも細密な。そんな細かく厳密な設定も面白かったです。
棒人間じゃダメだった、とか。
鳥になるって発想はとっても素敵で面白かったです!

ですが、私が面白く感じたのもここまででした。

結局のところ、登場人物にさほど魅力を感じられず、勿論感情移入も出来なくて、俯瞰的にしか読めませんでした。
登場人物がどうしても記号的にしか感じられなくて、そもそも真はストーリー的に必要なかったのでは、とさえ思ってしまったり。

お城の絵の成り立ちも気になりました。
ファンタジーにそういうツッコミをするのは無粋でナンセンスな事だと重々承知ですけれど、ちょっと無理がある気がしまして。
真達と同じ世界に19歳まで生存していた伊音が、どうやって過去の自分(9歳の伊音)を閉じ込められたのか、と。タイムパラドックスになっちゃう。
銀行に絵を貼ったのが19歳の伊音。
そしてタイムトリップ。
9歳の伊音を閉じ込める。
ここまでは解るのですが、結局、じゃあ誰が銀行に絵を貼ったんだってなっちゃうと思うのです。
19歳の伊音が自殺した時点で、新たな並行世界が生まれたって事なのかな??
そうだとしても、じゃあ真達はどちらの世界にいるのかって事になるし……。
うーん、その辺りの設定は、単に私が読み落としたのかもしれません……。

そして文章。
『ブレイブ・ストーリー』で距離を置く事を決めたのは、文章が読み辛かったからでした。
いやはや……今作も読み辛かったです……。
テンポが合わない読み辛さ、と言いますか。
こればっかりは個々人の好みだと思うので、単に私には合わない文章だった、という事です。残念です。

ラストはキッチリと地に足が着いたカタルシスがあって、読後感は良かったです。
各々抱えた思いに、それぞれが折り合いをつけられましたし、伊音も助ける事が出来ました。
ささやかだけれど、確かなハッピーエンド。
良い終わり方だと思いました。

欲を言うと、もっと絵の中を沢山冒険してみて欲しかったです!
posted by ミクロン at 22:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月08日

私の中のあなた

『私の中のあなた 上・下』
著:ジョディ・ピコー/訳: 川副智子(ハヤカワ文庫NV)

【上巻】
13歳のアナは、白血病の姉ケイトのドナーとなるため、遺伝子操作を経て生まれた。ケイトの病状は一進一退を繰り返し、ついには腎臓移植が必要となる。しかし、アナは腎臓の提供を拒み、両親を相手取って訴訟を起こす。もう姉のドナーになりたくない、自分の体を守る権利がほしい、と。娘の突然の行動に戸惑う両親だが、アナの決意は固い。そして両親とアナは法廷で争うことになる―ニック・カサヴェテス監督映画の原作。

【下巻】
臓器提供を拒否する姿勢を崩さないアナ。弁護士の資格を持つ母サラは、長女ケイトの命を救うために、次女アナと法廷で対決することを決意した。一方、アナの弁護士キャンベルも万全の備えで裁判に挑もうとしていた。戸惑い、悲しみ、無力感―さまざまな思いを抱えつつ、家族は裁判の行く末を見守る。はたして、法廷で明らかになる真実とは?姉妹を待つ運命とは?家族の絆のあり方を真摯に問う感動作、話題の映画化。
(「BOOK」データベースより)


公開当時、映画館へ観に行ったものの、それきり原作は読んでいませんでした。
決して映画がつまらなかった訳では無くて、映画だけで満足だったのです。
で、つい最近になって、偶然、原作と映画ではどうやら結末が真逆らしいと知り、俄然興味が湧いたので読んでみました。

原作もなかなか面白かったです。
大筋はほぼ同じなのですが、本当に最後だけ、オチだけが逆転していました。

映画ではケイトの意志が尊重される形になり、そのまま彼女が死亡。
原作ではアナが事故死、それと因果関係はさほど無いものの、ケイトは生存。

こういう問題に正解も不正解もないですし、結局のところ、当人達の受け止め方が全てなのだと思います。
でも、全ては結果論と承知の上で、あえて言うなら、あまりにアナにとって理不尽な結末だったと思いました。
事故それ自体は偶発的なものなので除外するとしても、その出生の理由に始まり、これまでの日々、そして最後に提供した臓器はケイトの快復にはほとんど役に立た無かった事など……もうひたすら不憫でしかありません。
映画で結末を逆転させた理由が分かった気がしました。

原作を読むと、映画も良く出来ていた事がよく分かりました。
原作では周囲の人たちの背景も描かれるのですが、掘り下げが中途半端で、必要だった疑問に感じる人物もチラホラ。
映画ではそういった人たちはバッサリ省かれていてシンプルで良かったな、と。
父親と兄のジェシーは原作の方がしっかり描かれていて良かったですが。
何にせよ、どちらも非常に考えさせられる作品でした。

余談ですが……どうしてもこの頁数で分冊の必要があったとは思えないのです(>_<)
1冊にまとめて頂きたかった……お値段的に(爆)
posted by ミクロン at 19:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月14日

封神演義 導なき道へ

『封神演義 導なき道へ』
原作:藤崎竜 小説:吉上亮(JUMP j BOOKS)

女媧との戦いの後。人界も仙界も大いなる道標から解き放たれ、定まりきらない未来へ歩み出している。そんな中、最強の道士、申公豹は一人神界を訪れる。神界に居る、大戦で命を落とした魂魄たちに聞かなくてはならないことがあるというのだが……。
「BOOK」データベースより


うーん、ちょっと期待外れでした。
『覇穹』がああだった反動か、ちょっと期待してしまっていたのが悪かったようです(爆)

8割位は原作を文章化した内容。
残りの2割が、キャラの心情とオリジナル、と言ったところでしょうか。
原作での細かな心情を補足するかのようなお話でした。
ではそれぞれ少しずつ。

【第一章 普賢】
仙人界にいた当時の太公望が、ちょっと硬いような気がします。
まるで当初から伏羲のよう。
細かい事ですと、普賢が楊戩を“さん”付けで呼んでいたのはちょっと気になりました。原作では呼び捨てでしたから。

【第二章 聞仲】
殷での生活がメイン。
殷との関係、飛虎との関係等々。ちょっと同じ内容が繰り返しになっていて冗長に感じました。
商容と比干の登場は嬉しかったです♪
申公豹にお茶、それも趙公明からの紅茶を出す聞仲は、想像するとなんだか微笑ましかったです。
聞仲が出すなら日本茶のイメージ。それも渋〜いやつ(笑)
ちょっとだけ気になったのは妲己の呼称。
太丁時代の彼女は王氏を名乗っていたはず。
回想だから妲己と呼んでも間違いとは言えませんが、“その名も妲己”とするのはちょっと気になりました。“妲己”の名前は彼女の本当の名ではないですからねぇ。

【第三章 趙公明】
今回、一番面白かった章です。
彼の生命観はその原型と相俟って、説得力がありました。
一番違和感なく申公豹とやりとりが出来ていたと思います。

【第四章 天化】
神界でガテン系を担ってる設定は楽しかったです。神界の中の話はもっと読みたかったな〜。
天化の話はほぼ原作そのままでした。

* * * * *

全体的にキャラがちょっとぎこちなく、違和感がありました。
何となく『覇穹』の方のキャラに近いような気が……。
でも逸脱していると言う程でもないので、その辺りは個人の感じ方かと思います。

良くも悪くも“ライトノベルでノベライズした”といった作品でした。
サラッと読めますが、変な言い回しだったり、擬音語が多かったりも気になりました。
カッコイイ書き方をしたい、と言うのだけはヒシヒシと伝わってきましたが(苦笑)
例え単語や言い回しを変えたとしても、同じ内容を何度も繰り返されるのは読みづらかったです。
原作も元を辿れば小説なので、もう少ししっかりした文章で読みたかったので、ちょっと残念。

総じてちょっと原作に色を付けた程度のお話でしたので、もう少しオリジナリティも欲しかったです。
それとも設定に無理があったのかな……。
折角申公豹を使うなら、他の始祖達とお話させてみたりしても面白かったかな、とか。
申公豹自身の過去話も面白そうですしね。
なので、今度は色々な作家さんに書いてみて頂きたいですね!
posted by ミクロン at 01:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月08日

ブラック・ベルベット

『ブラック・ベルベット』
著:恩田陸(双葉文庫)

東洋と西洋の交差点、T共和国。外資製薬会社の凄腕ウイルスハンター・神原恵弥が訪れた目的は、夢のような鎮痛剤と噂される「D・F」についてある人物から情報を得ることと、T共和国内で消息を絶った女性科学者を捜索すること。そしてもう一つは、密かに恋人関係にあった橘浩文と再会することだった。国内で見つかったという黒い苔に覆われた死体、女性科学者の足取り、「D・F」の正体、橘の抱える秘密…。すべての背景が明かされて浮上する、驚愕の事実。好評シリーズ第三作!
「BOOK」データベースより


久しぶりの神原恵弥シリーズ新刊!!
恩田作品の中でもかなり好きなシリーズです♪
1作目の『MAZE』が大好きなのですが、前作からはちょっとテイストを変えて、旅行記ミステリになった模様。

今作は近年の恩田作品の中ではピカイチで面白かったです。
やはり恵弥の話し方が巧くて面白くて惹き込まれてしまいました。
けたたましいけど、押しつけがましさがなくって自然体なのが素敵です。
恩田氏はやはりエンタメ作品が一番向いているのかも……と思いました。

観光したり謎が謎を呼んだり疑心暗鬼になってみたり。
飽きる間もなく展開していくのは読んでいて本当に爽快でした。
T共和国にますます行きたくなりました。

今回はこれまでの面々も続々登場。
満以外はあまり覚えていなくて、結局前2作も読み返しましたが(笑)
そこで気付いたのですが、満って中学時代の同級生だったのが、前作から高校の同級生に変更されていたんですね。
全然気付かなった……。

このシリーズは是非続いて欲しいです。
posted by ミクロン at 03:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月01日

玉依姫

『玉依姫』
著:阿部智里(文春文庫)

高校生の志帆は、かつて祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪れる。そこで志帆を待ち受けていたのは、恐ろしい儀式だった。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶体絶命の少女の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か?ついに八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかになる。荻原規子氏との対談収録。
「BOOK」データベースより


シリーズ5作目。
前作、前々作とかなり面白くなってきただけに、今回は割と期待しておりました。
しかし次巻で完結との事なので、やっぱり様子見で電子版を購入。
結論から言うと、電子版で正解でした……(爆)
今作は外伝のような印象。
もともとはこちらのお話があって、八咫烏の方がスピンオフ、との事でしたので、そのように感じたのはあながち間違いではないのでしょうが、それにしてもちょっと期待していたものとは違いました。
外伝が悪いとかではなくって、内容そのものが……ちょっと酷い感想になりそうですが、どうぞご容赦下さいませ。

でも先に良かったと思う所を……。
外界が人界である、というのは随分前から暗示されていましたが、とうとう山内の成り立ちが明かされました。
これはスッキリしました!!
親切過ぎる大天狗は微笑ましく、頼り甲斐があって良かったのですが、あまり彼を活かしきれていなかったのがやや残念。
便利屋キャラになってしまっていたような。

では、ネガティブな方を……(爆)
一応時系列としては前作の続きで間違いないようですが、一番知りたかった部分がスッポリ抜け落ちていて、推測する事すら出来ない程描写がありませんでした。
そう、烏と猿はどうやって(仮初だとしても)停戦、もしくは和解をしたのか、ってところが一番知りたかった……。
どうして再び禁門を開けたのか、はたまた猿側から禁門を通って来たのか。
小猿を殺してまで烏と敵対していた(と言うか食べたがってた?)のに……。
山神に烏達を殺して貰って、その上で山神に成り代わるつもりだったのかな??
うーん、烏を食べたら馬鹿になるって言うのも気になっていたのですが……次回に持越しですかねぇ。
大猿の感じだと、もっと他に思惑があったようにも感じられましたが、結局最後に椿の荒魂と一緒に倒されたっぽいので、もう分からず仕舞い……なのでしょうか。
あれほどイイ感じに不気味だったのに、勿体なーい!!

今作はどうにも設定が稚拙というか、異世界と現実と上手く融合させようとして失敗してしまった、という印象でした。
山内村の設定では説得力があまりに無いので、かなり強引に感じてしまって、逆に違和感が際立ってしまったような。
人と人ならざる者の解釈や、神の名の辿り方など、どれもこれもどこかで読んだような書き方だったのも気になりました。
荻原規子と小野不由美を足して割ろうとして、失敗したような……。

これまでの山内の世界観が非常に薄っぺらくなってしまったのが勿体ないです。
ちょっと期待し過ぎだったのかもしれません……だって猿の不気味さが本当に素敵だったから……。
次巻で第一部完結との事。

タイトルから察するにハッピーエンドなのでしょうか。
しかし山神が落ち着いてしまったのなら、山内の問題も解決するはずで、次巻は一体何をするんでしょう。
ともあれ、雪哉も再登場のようですので、ちょっぴり期待しても……いいでしょうかね??(涙)
そういえば今回殺された近習って、過去の登場人物の誰か……とかではないのでしょうか??
色々考えたのですがイマイチ分からなくって。呪いを受けたのは恐らく明留ですよね??
彼は一先ず助かってホッとしましたが、となるとその場には他にも……と思ってしまって。
むむむ。

好き放題に書き散らしてしまいました……。ご不快でしたらごめんなさい(>_<)
posted by ミクロン at 22:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする