2018年01月08日

アイネクライネナハトムジーク

『アイネクライネナハトムジーク』
著:伊坂幸太郎(幻冬舎文庫)

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。
「BOOK」データベースより


『首折り男のための協奏曲』ではちょっとガッカリが強かっただけに、やや覚悟しつつ読みました(爆)
ではザッと。

『ライトヘビー』
オチが予想外で面白かったです。
私はジョン・レノンのミドルネームは知りませんでしたが、知ってる方なら途中でピンと来たのかな??
思わずなるほど、と納得。

『ドクメンタ』
これもオチが良かったです。
まさか通帳とは!
思いもよらない手段です。
ぼかした結末でしたが、ちゃんと後々分かるようになっていたのも良かったです。

* * * * *

どの作品も粒揃いでムラなく楽しめました。
ただ、全体的にとっても軽めなので、あまり強く印象に残るような感じではないのが惜しいです。
今作も“The 伊坂作品”の典型な感じではあったのですが、『首折り男のための協奏曲』と違って楽しく読めました。
今作は連作としてまとまりがあったから……なのかなぁ。
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2018年01月05日

首折り男のための協奏曲

『首折り男のための協奏曲』
著:伊坂幸太郎(新潮文庫)

被害者は一瞬で首を捻られ、殺された。殺し屋の名は、首折り男。テレビ番組の報道を見て、隣人の“彼”が犯人ではないか、と疑う老夫婦。いじめに遭う中学生は“彼”に助けられ、幹事が欠席した合コンの席では首折り殺人が話題に上る。一方で泥棒・黒澤は恋路の調査に盗みの依頼と大忙し。二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る!伊坂幸太郎の神髄、ここにあり。
「BOOK」データベースより


かれこれ1年近く積読で放置、読後も感想を書くのも放置しておりました……。
既読本が溜まってきたので、ようよう重い腰をあげて、印象に残ったものだけザックリと感想です。

『首折り男の周辺』
短編ながら登場人物も多く、濃い作品でした。
それぞれのエピソードがきちんと繋がって、読後感スッキリで楽しめました。

『濡れ衣の話』
伊坂氏らしい雰囲気のお話でした。
影はあるけれど、優しい。
時空のねじれ設定は面白くなりそうだったので、もう少し連作で読みたかったです。

『僕の舟』
今作で一番印象に残りました。
とっても綺麗に作られていて、さらりと読めてしまうけれど、心に残るような。
黒澤氏は久しぶりの登場のような気がします。

* * * * *

後半はちょっと新鮮味を感じられずモヤモヤ。
“The 伊坂作品”とでも言いますか、悪くもつまらなくもないのですが、どうも過去の作品と似たり寄ったりの印象しか受けず……。前半がなかなか面白かっただけに残念です。
首折り男(大藪と小笠原両名)の話を連作で読みたかったところです。
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2017年11月21日

明治・妖モダン

『明治・妖モダン』
著:畠中恵(朝日文庫)

「江戸が終わって20年。妖たちがそう簡単にいなくなると思うかい?」モダン銀座の派出所に勤める巡査・原田と滝の元へは、瞬く間に成長する少女や鎌鼬に襲われた噂など、不思議な厄介ごとばかり持ち込まれて……!?ゾクゾク妖怪ファンタジー、第1弾。
「BOOK」データベースより


“しゃばけ”と“若様組まいる”の中間のような作品でした。
“若様組まいる”のように少しシビアな世で、登場人物の悪感情も強めに描かれていて。
それでいて、妖達が主役。

“煉瓦街の雨”のオチは雰囲気が出ていて良かったですし、“花乃が死ぬまで”は“しゃばけ”寄りの優しさと切なさのある話でした。
ただ、どれもそれなりに面白かったのですが、若干マンネリ気味の印象でした。
どうしても“しゃばけ”と比べてしまう、というのもありますけれど、登場人物の個性がどうも定型化しているような。
もう少しそれぞれの背景や心情が描かれてくるといいなぁと思いました。

ちょっぴり期待したのは、明治の世を生きる“しゃばけ”メンバーもチラッと出てくるかな、と。
充分あり得そうですが、そうなると作品の雰囲気がチグハグになる気もしますね……うーん。
でも今後に期待してます!
posted by ミクロン at 19:00 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

ロボット・イン・ザ・ガーデン

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』
著:デボラ・インストール
訳:松原葉子

AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。弁護士として活躍する妻エイミーとは対照的に、親から譲り受けた家で漫然と過ごす三四歳のベン。そんな夫に妻は苛立ち夫婦は崩壊寸前。ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけた旧型ロボットのタングを発見。他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、作り主を探そうと、アメリカへ。中年ダメ男とぽんこつ男の子ロボットの珍道中が始まった……。タングの愛らしさに世界中が虜になった、抱きしめたいほどかわいくて切ない物語。
「BOOK」データベースより


完全に、表紙と設定に騙された作品でした(爆)
以下、ちょっと酷い感じです。ごめんなさい!

タングの可愛らしさは十二分に解るのですが、特筆すべきはその可愛らしさだけでした。

大筋は、タングがどこから来たのかを探す旅なのですが、先を予想したくなるような謎もワクワクも無く、淡々と進むロードムービー。
どのエピソードも目新しさに欠け、どこかで読んだ(観た)事のあるような展開が続き、ようやくタングと製作者が再会するものの、やっぱり意外性のない展開で、長い無駄足を見せつけられた気分になりました。

旅から帰った後は、主人公夫婦のドラマへと変遷。
主人公の奥さんであるエイミーは、アメリカの作品らしい(と言っては偏見になりますが)女性像で心底うんざり。
でも、結構酷い事してたりするのに、結局エイミーの都合の良い形のハッピーエンドになってしまったのにも、モヤモヤ。
タングとエイミー、どちらかに焦点を当てて掘り下げた方が面白くなったように感じました。
SFとしても、ヒューマンドラマとしても、どうにも中途半端な印象です。
タングは本当に可愛いんですけれどねぇ。

まだまだ本を見る目が養われていないなと、思い知らされた作品でした。
posted by ミクロン at 22:00 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月01日

天盆

『天盆』
著:王城夕紀(中公文庫)

蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」を制した者。人々は立身を目指し研鑽に励むが、長い間、平民から征陣者は出ていない。そんな中、貧しい十三人きょうだいの末子・凡天が激戦を勝ち進み――少年が歴史に挑むとき、国の運命もまた動き始める。圧倒的疾走感で描き出す放熱ファンタジー!
「BOOK」データベースより


全く存じ上げない作家さんだったのですが、店頭でタイトルに惹かれて何気なく手に取り、1〜2ページ試読してみて、やっぱり妙に惹かれたので購入しました。

久々の大当たりの作品でした。
もう絶賛しかないです。
世界観も、ストーリーも、登場人物も。
夢中で読んで、文字が読み辛くなってようやく周囲が暗くなった事に気付いて電気を点ける、なんて事は本当に久しぶりでした。

“天盆”というゲームが中心となったお話なのですが、その描写が素晴らしかったです。
ルールだの駒の動きだのを、くだくだと説明されでもしていたらウンザリしたと思いますが、おおよそ将棋のようなゲームであろうと推測できる程度の説明に留めてあり、その辺りの匙加減が大変巧く、何となく理解した気になれたほど。
例えるなら、碁はサッパリにも関わらず、物凄く楽しく読めた『ヒカルの碁』のような。

登場人物達もキチンと個性が描かれていて、家族が多い割に、無駄な登場人物はいないように感じました。
凡天は捉えどころがないのですが、たまに話すと子供らしくて可愛い。終盤の十偉とのシーンが特に可愛らしくって。
何だかんだで十偉も非常に人間らしくて素敵でしたし、一龍は貫録があって頼もしい。いつも一緒の三姉妹は口が達者で微笑ましかったですし、二秀も捻くれたりしない努力家で応援したくなりました。六麗はちょっと不遇で可哀想でしたが。
個人的には永涯が好きです。こういう高潔な人物は見ていて(読んでいて)とても清々しい気持ちになれます。
少勇は本当にカッコイイ奴でした!!
人として憧れるのは、こういう人だなぁって。

ストーリー自体は王道な展開なのですが、登場人物達の個性と早いテンポで、全く飽くことなく、むしろ完全に引き摺りこまれました。
簡潔明朗な文体でセンテンスも短く、“天盆”の対局中の息詰まるような緊迫感と高揚感、そして“天盆”の局面の大きな流れがヒシヒシと感じられました。こういう心理的な空気感の表現は、小説ならではの表現だなぁと改めて感じました。
細かなエピソードで曖昧な書き方のまま、といったところもいくつかあるのですが、それも些末な事と許容できる程度でした。脱臼とか封手とか。

結末も素晴らしかったです。
好みは分かれるであろう結末だとは思いますが、ちゃんと世界観が保たれたままの終わり方だと感じました。
勿論彼らのその後は非常に気になりますが、あの勢いのまま、あの熱狂のまま締め括られたからこそ、胸一杯の余韻になったのだと思います。
そして最後の一文の泣けること、笑えることと言ったら。

久しぶりに読書の楽しさを心から味わえた作品でした。
幸福感で一杯です。
posted by ミクロン at 23:00 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする