2019年06月25日

飢え渇く神の地

『飢え渇く神の地』
著:鴇澤亜妃子(創元推理文庫)

死の神ダリヤの伝説が残る西の砂漠。十年もの間、砂漠に消えた家族の行方を探し続けている地図作りの青年カダムは、今日も探索を終えて落胆しながら帰宅した。そんな彼をレオンという怪しげな宝石商が道案内に雇いたいと言ってくる。だがカダムたちが砂漠の奥深くへと迫ったとき、そこに眠る恐るべき秘密が目を覚まし…。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞の著者の意欲作!
「BOOK」データベースより

『忘却城』を購入した際、すぐ側に並んでいて気になっていた作品でした。
タイトルが素敵で、1〜2頁読んでみても良さそうな感じだったので後日購入しました。

全体的に過不足無く、キッチリと出来ていて完成度はとても高いと思いました。
テンポも良いし、描写も分かりやすく丁寧で非常に読み易いです。設定自体も、全体の雰囲気もとっても私好みで、最後までワクワクして読めました。
ただ、完成度が高い分、個性や目新しさに欠け、印象に残りにくい作品でもありました。

異世界ファンタジーかと言われるとちょっと違うように感じました。
カダムらの生活様式等はほとんど近代そのものでしたので(イメージとしては、スペインとモロッコ。あくまでイメージですので、根拠は特にありません・苦笑)、特に異世界である必要性は無かった気がしました。現実世界にちょっぴり神話や呪術等、非科学的な要素が入ったタイプ。
ですので、現実世界にファンタジーを織り込む形の方が、より説得力があったのでは、と思ったり。

キャラクター達もそれぞれ悪くはないのですが、レオンに関してはどうしても付け足し感が否めません。どうにも不自然すぎて、すぐに正体の予想が付いてしまって……。
地味に好きなのはエシキ。序盤ではラスボス的なキャラかと思いましたが、読み進めるにつれ、非常に親しみを持てました。
勿論サールは大好きです!

神話や願い石の設定はとても面白く、どうなるのかと期待していましたが、どうも不完全燃焼だったような……。
シュトリが今も実存していたと分かった時は本当にワクワクしたのですが、結局ただそこにいるだけな感じで終わってしまったのが非常に残念でした。もっとアレコレと長い年月のお話が聞きたかったです。

身も蓋もない表現をすると、アクション抜きの、映画『インディ・ジョーンズ』のような作品でした。
この作品は小説でよりも映像の方がより真価を発揮出来る気が。
ハリウッドで映画になったら、きっととっても見応えがありそう!!
隠し部屋や願い石が生まれるシーンはとっても綺麗だと思うんですよね。
posted by ミクロン at 01:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月01日

忘却城

『忘却城』
著:鈴森琴(創元推理文庫)

忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀珈王国。過去の深い傷を抱えた青年儒艮は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない盲獄と呼ばれる牢で目を覚ます。儒艮ら六人を集めたのは死霊術師の長、名付け師だった。名付け師は謎めいた自分の望みを叶えるよう六人に命じ、叶えられた暁には褒美を与えると言うが…。第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作。
「BOOK」データベースより

ミュージカル『レ・ミゼラブル』遠征の際、ホテルで読む本を買おうと本屋をウロウロしていて、タイトルに惹かれて購入。
久しぶりの当たりでした。
普段から本は出来るだけ実店舗で買うように心がけていますが、こうした出逢いがあるのが最大の魅力だと思っています。
やっぱり本屋は素晴らしいですね〜!!

かなり綿密に創り込まれた重厚な世界観と、多種多様なキャラクター。
そして常に全体を覆う凍てつく影。
大変読み応えがありました。
恐ろしくテンポも良く、正直これは隙間時間に読む作品では無かったと後悔した程。
しっかり集中して一気に読みたくなる作品でした。
切れ切れで読んだので、正直まだ全体像を受け止めきれていない感じがしています。

忘却城=死者の霊魂が辿り着くところにある城、との事ですが、この城に関しての詳細な描写はあまりありません。
それでも何とも言えない存在感と不気味さがあり、常に意識させられます。
とにかく死者が重要な世界観ですので、常に影と冷たさがあり、雰囲気だけでも十二分に楽しかったです。

キャラクターもそれぞれしっかりしており、個性があって分かり易かったです。
お気に入りは勿論、金魚小僧!
とても哀れでとても可愛い。どういった形であれ、彼の幸せを願わずにはいられません。
象牙も健気で好感が持てるのですが、ちょっと中途半端な役所に感じました。
余談ですが、曇龍はパワーちゃん(『チェンソーマン』)のイメージで読んでいました(爆)

中華風の世界観かと思いきや、それはあくまでもベースであり、西洋風のスーツなども出てきたり、その幅は広いです。
専門用語も多いですが、それぞれ丁寧な説明があり、またそれらを冗長に感じさせない巧さもあって、苦ではありませんでした。

ただ少し難に感じたのは、構成でした。
推理小説で言う所の最後の解決シーンを盛り上げるためか、かなり序盤から意図的な説明不足が目立ちました。不足と言うよりは秘匿かな??
そのため、そもそもの儒艮達の目的も掴めず、彼らの行動の意図も図れず、共感もし辛く(その時々で断片的には出来るのですが)、ただ経過を眺めているだけになってしまいました。
各人の内面も、そういった狙いの為か描写が少ないように感じました。
眺めているだけなので先の展開に対してろくな予想も出来ず、それ故かえって解決シーンでも驚いたり、衝撃を受けたりという事が出来ず……。
その辺りがかなり勿体ないと感じました。

それでもその濃密な雰囲気とテンポの良いストーリーにドップリ浸って読めました。
世界観に浸れる、という作品は実は割と少ない気がします。
読後も半身をその世界に置いてきたような、現実から切り離されたような感覚を久しぶりに味わえました。
次回作も楽しみです♪
posted by ミクロン at 02:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月09日

謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー

『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』
著:恩田陸、はやみねかおる、高田崇史、綾崎隼、白井智之、井上真偽/文芸第三出版部・編(講談社タイガ)

「館」の謎は終わらない―。館に魅せられた作家たちが書き下ろす、色とりどりのミステリの未来!最先端を行く作家たちが紡ぎ出す6つの謎。
「BOOK」データベースより

久しぶりに恩田陸『三月は深き紅の淵を』を再読しましたら、止まらなくなり、そのまま『麦の海に沈む果実』、『黒と茶の幻想』、『黄昏の百合の骨』と立て続けに再読。
読後、水野理瀬シリーズの新作はまだ出ていないのかな〜、とAmazonで検索した結果、この本を発見した次第です。
まさか未読の短編があったとは。
短編でも嬉しい(*^v^*)
そんな訳で、感想はお目当ての『麦の海に浮かぶ檻』だけです(爆)
ネタバレ無しには語れませんので、ご注意&ご容赦を。

ウカウカと騙されました。
かつては校長も理瀬と同じ立場だったんですねぇ。
それらの競争を勝ち抜いたからこそ、あの全く隙のない完璧さを装えるのでしょう。
遂にお名前と女装の秘密が判明したのも非常に嬉しいです。
どうも恵弥を彷彿としますが。
あ、実は遠縁だったりして。
途方もない数の血縁者がいるようですし、有り得なくもない……ですよね。

そして、当時の校長。理瀬にとっての祖父。
彼は『麦の海に沈む果実』で登場していますが、かつては現校長にそっくりな感じだったんですね(正しくは現校長がそっくり、と言うべきなんでしょうけれど)。
学園の創設者たる彼の話も非常に読んでみたいです。彼が書いた赤い表紙の日記とか!
出来れば長編で!
やはり短編は物足りなーい!!(爆)

本編の続きも早く読みたいものです。
以前、連載中と何かで読んだ気がするのですが……まだ出ないのかなぁ。
首を長くして待っております!
posted by ミクロン at 21:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月02日

消滅 VANISHING POINT

消滅 VANISHING POINT(上・下)
著:恩田陸(幻冬舎文庫)

【上巻】
超大型台風接近中の日本。国際空港の入管で突如11人が別室に連行された。時間だけが経過し焦燥する彼ら。大規模な通信障害で機器は使用不能。その中の一人の女が「当局はこの中にテロ首謀者がいると見ている。それを皆さんに見つけ出していただきたい」と言った。女は高性能AIを持つヒューマノイドだった。10人は恐怖に戦きながら推理を開始する。

【下巻】
北米からの帰国者に感染力の高い新型肺炎の疑いが生じる。連行は細菌兵器ゆえの隔離、ヒューマノイド対応だったのか。テロ集団はなぜ「破壊」でなく「消滅」という用語を使うのか。様々な憶測が渦巻くが依然、首謀者が誰か掴めない。やがて孤絶した空港に近づく高潮の危険。隔離された10人の忍耐と疲労が限界を超え「消滅」が近づいた時、爆発音が!
「BOOK」データベースより

いやはや、満足です。
これぞ恩田作品、な作品でした。
少しの閉塞感に息苦しさ、一抹の不気味さ。
どことなく『11人いる!』(萩尾望都)も彷彿としました。
厳密には10人と一体と一匹でしたが(笑)

登場人物が多くてもゴッチャにならない描写はさすがです。
それぞれのイメージが明確で、活き活きしていて。
中でも凪人と喜良が面白くって好きです。
あとキャスリン。
不気味さと可愛らしさが非常に良かったです。

空港の雰囲気がとっても真に迫って感じられました。
残念ながら渡航経験は少ないのですが、保安エリア内の非日常な緊張感、帰国時の何とも言えない安堵や疲労感は非常に共感できました。

いつも若干の不安があるオチですが(苦笑)、今回はまずまず満足でした。
ちょっと突拍子もない展開にも感じましたが、まぁとりあえずは大団円だしって事で。

それにしても『バベル』は本当に実現して頂きたい物の一つです!
言葉の壁がなければ、一体どれほど世界が広がる事か。
デンタルフロスではないですけれど、ルパン(『ルパン三世』)はよく奥歯に無線を仕込んだりしていましたが、ああいった感じでもいいなぁ。
『肩の上の秘書』(星新一)のようなのも面白くて素敵ですね。勿論、要約はしない仕様のインコに限りますが(笑)

上下巻ともあっという間に読んでしまいました。
最近、文庫化ペースが遅いような気がするので、どんどん文庫化して頂きたいです〜!
posted by ミクロン at 21:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月21日

虚飾の王妃エンマ

『虚飾の王妃エンマ』
著:榛名しおり(講談社ノベルス)

彼女は、孤独だった。親にも顧みられず、なにも与えられなかった。彼女を救い出してくれたのは、兄・リシャール。彼は、教えてくれた。人の心を読む術を、人を操る方法を。そして彼女に命じた。自分にとっての駒になれと。エンマは、兄のためイングランドに嫁ぐ。待ち受ける運命も知らず。
(Amazon内容紹介より)

さっそくこちらも読みました。
『幸福の王子エドマンド』でガッカリしたせいか、こちらは面白かったです!(笑)

『幸福の王子エドマンド』でパッとしなかったエンマですが、こちらでは何て愛らしい!
そしてやっぱりアゼルスタンはエンマに惚れてたんですね〜。
まさかエンマもとは驚きでしたが。
既に結末を知っているだけに、猟犬小屋のシーンはほのぼのと微笑ましく、そして切なくもありました。
あ、あとワインを注ぐシーンも素敵でした!
『幸福の王子エドマンド』ではアゼルスタンの豪胆さが印象に残りましたが、こちらを読むと、密かに儚い幸せがあった事が分かってまた切ない……!

リシャールはなかなかインパクトの強いキャラで面白かったです。
彼が主人公のお話を是非読んでみたいと思いました。
そうそう、“人の気持ちが分からない”と言うのは比喩なのか、それとも何らかの発達障害だったという事なのでしょうかね。

次いでデュド。
もっと掘り下げて欲しかった……!!
とても神職者とは思えない行動が多いのですが、その辺りの行動原理がサラッと説明されたきりで、何とも惜しい。

そしてやはりこの人、クヌート。
こちらではチョイ役でしたが、とっても良い役でした。

二冊読み終えて思ったのは、分冊にする必要があったのかな〜、という事でした(爆)
“対”を強調するには、確かに分冊にした方が効果的ですけれど、どちらもストーリーがやや平板で冗長に感じたので、一冊に二部構成等でまとめてしまった方がスッキリし、密度も濃くなり良かったのでは、と感じたのでした。
とは言え、充分楽しく読めました♪
読む順番は本当にどちらからでも問題ないと思いました。凄いな〜。
posted by ミクロン at 20:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする