2019年10月13日

白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻

『白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻』
著:小野不由美(新潮文庫)

【第一巻】
戴国に麒麟が還る。王は何処へ―乍驍宗が登極から半年で消息を絶ち、泰麒も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎は慶国景王、雁国延王の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。―白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!
【第二巻】
民には、早く希望を見せてやりたい。国の安寧を誰よりも願った驍宗の行方を追う泰麒は、ついに白圭宮へと至る。それは王の座を奪い取った阿選に会うためだった。しかし権力を恣にしたはずの仮王には政を治める気配がない。一方、李斎は、驍宗が襲われたはずの山を目指すも、かつて玉泉として栄えた地は荒廃していた。人々が凍てつく前に、王を捜し、国を救わなければ。―だが。
「BOOK」データベースより

遂に、この日が。
小学生の頃、友人に強く薦められて初めて読んだのが、奇しくも『風の海 迷宮の岸』(WH版)でした。
あれから随分な月日が経ち、いつの間にか泰麒の年齢を追い越してしまいましたが、ようやく彼の物語も完結するのかと思うと非常に感慨深いものがあります。
正直、発売前の数日は期待と不安とで胃がキリキリ痛む程でした。
全国一斉発売という地方民には大変有り難い措置のお陰で、発売日当日に手に入れる事が出来、誘惑に抗えずに読んでしまいました。
まだ、一度しか通して読んでいませんが、ちょこっと感想を。

ちなみに、ネタバレ全開です。
ご注意下さいませ。

正直、言葉が出ません。
やっと、という思いと、まだまだこれからなんだ、という思い。
とにもかくにも戴へ帰還出来た安堵感と、そこから先の、あまりに見えない先行きに対する、もどかしさと。

まず、泰麒サイドの感想を。
黄昏の岸 暁の天』で感じた阿選の不気味さは、今巻ではあまり感じられず。
むしろ、ちゃんと言葉が通じる事の方に驚きました。
まだまだ何も明かされていないので、何とも言えませんが、彼の麾下達の居たたまれなさは気の毒でした。
特に恵棟。人柄は良さそうなだけに、余計気の毒。
が、あまりに大逆への罪の意識が低い事にも驚きました。
『乗月』で桓魋が言っていたような感じなのでしょうかね。
しかし、予王と違い、驍宗はまだ道を外れたりしていなかった訳で。
その辺りが何ともモヤモヤでした。

阿選の影がどことなく薄い分、「魂魄を抜かれた」官吏達が不気味でした。
まずはここの解決からかな、と。
個人的には鳩が怪しいと思っております(爆)

正頼もともかくは生きているようで何より……だと良いのですが。早く再会出来るといいなぁ。
巌趙もね、一応は無事なようなので、やっぱり早く再会して欲しい。
琅燦は意外にもキーパーソンとなっていて、こちらも早く何がどうなっているのか教えて欲しいところ。
阿選の使う(とされている)幻術も、彼女ならどうにか出来ないのかな。

あ、汕子達はやっぱり引き離されたままなんですね。
「清める」と言っていたので、穢れが祓えたら戻してくれるのかな、なんて甘い希望を抱いていたのですが……ダメかなぁ。

お次は李斎サイド。
彼女の並々ならぬ苦労、いつか必ず報われて欲しいと願っています。
が、今巻でもひたすら苦難と悲嘆を味わうばかりで、胸が痛みます……。

今巻で初めて道観や寺院等、宗教的な設定が出てきて面白かったです。
ちょっとだけ複雑で、理解するまで戸惑いましたが、そう言えば、楽俊が寺院は山客が〜って話をしていたな、と思い出したり。
白幟って、かなり怪しいと思ったのですが……李斎達はスルーしてしまったので、あまり重要ではないのかな。
朽桟って好きです。決して清廉潔白ではありませんが、非常に人間味があって。
彼ら土匪達も、いつか報われる日が来て欲しいです。

そして、驍宗。
どうも亡くなったのが彼とは思いにくくて、生きているのでは、と思っています。
今後玉座に戻れるかどうかはともかくとして。
回想シーンで、自分の事を“面白味がない”と評していました。その彼が、歌なぞ歌うかな、と。
そういうタイプには思えなくて。
しかし身体的特徴が一致してるしなぁ。……いやいや、嘘って事もあるよね。
等々悶々と考えております。

最後に全体的な感想。
ちょっと冗長に感じました。
長く浸れるのはとっても楽しく、嬉しかったのですが、同じところをグルグルしているような感じが拭えず。
以前読んだ、似たような説明をさっきも聞いた、というような事を度々感じました。
その辺を差っ引くと、全3冊に収まったかも、と思ったりして。

冬の描写がたまらなく素敵です。
十二国記では、よく冬の情景が出てきますが、冬の冷たさが物凄くリアルです。
特に今回は、発売日が10月(こちらはそろそろ初雪の時期)ですから、もう余計に臨場感が凄くて。
否応なしにあの凍え、内へ内へ籠る季節が来る事を思い知らされる気分でした。
雪国民なので冬はとっても好きなんですけれどね。
次巻はもっと寒々しくなるんでしょうね……早く戴が救われますように。

誘惑に負けて読んでしまいましたが、ちょっぴり後悔しております。
続きに飢えしまって……!!!
確実に続きが出る、と分かっているだけに、その飢えも倍増なのです(笑)
あと約1ヶ月……ひたすら読み返して過ごします!
posted by ミクロン at 16:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月28日

忘却城 鬼帝女の涙

『忘却城 鬼帝女の涙』
著:鈴森琴(創元推理文庫)

死者を蘇らせる術で発展した亀珈王国。名付け師が居を構える霊昇山に、死者の代弁機関、夢無鵡予言院から使者が訪れる。二十四大鬼の一体に不穏な動きがあり、退魔を要請したいというのだ。名乗りをあげたのは百人の御子のひとり、才はあるが病弱な千魘神だった。同行するのは、牢から放たれ、霊昇山に身を寄せる王族殺しの大罪人・曇龍。果たして大鬼退治は成功するのか。
「BOOK」データベースより

早くも続編です。
本屋で見つけた時は目を疑いました。
元々準備してあったのか、速筆なのか。いずれにせよちょっと早過ぎでは……!?
読者としては大変有り難い限りですが。

前作と遜色なく面白かったです!
非常に読み易くなった分、完成度がより高くなったように感じました。

相変わらず私のツボにハマるおどろおどろしさ。
忘却城に、稀に生きている人間の真名の碑が立っている、とか、自発的に亀裂に飛び込むとか。
本当に薄気味悪さがツボ過ぎです。
ニヤニヤしながら読みました(爆)

てっきり主人公は前作に引き続き儒艮かと思いきや、曇龍でした。
曇龍はちょっぴり苦手だったんだよなーと思いつつ読みましたが、ようやく背景が明かされて、内面を理解する事ができ、手のひら返してとても好きになりました。
舞蒐は前作より更に親しみ易い雰囲気に。
魘神はとっても可愛いですね〜!
もう完全に今作のヒロインは彼ですね(笑)
皆幸せになって欲しい、と願わずにはいられないです。
今回は人物が皆活き活きしていて、誰も彼もがとっても素敵でした。
って、百人の御子って、もしかして全員『鬼』の字が入るんですかね!?
魍千と魎千は、パッと見、混同する事がしばしば……(^^;)

そして二十四大鬼討伐。
こうなると、やはり他の大鬼も討伐してみて欲しいです。どんななのかが気になります。そして全部討伐出来たらどうなるのかな。
でも討伐してしまうのも何だか哀れで、ちょっと複雑です。
救済も出来るといいのでしょうけれど……。
酷ですが、金魚小僧にあれこれ聞いてみて欲しい気もします。

夢無鵡予言院の方も気になります。
死者について、もう少し詳しく知りたいところです。
一度は忘却城へ辿り着いたのだから、忘却城がどんな所だったのか、何があるのか、とか。
そもそも忘却城そのものを誰が建てたのか……!
ああでも、忘却城では眠っているらしいから覚えてないのかな〜。
その辺りもいずれ読んでみたいです♪

このままシリーズ化される事を願っています!
posted by ミクロン at 03:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月03日

ロードス島戦記 誓約の宝冠1

『ロードス島戦記 誓約の宝冠1』
著:水野良

“呪われた島”ロードス。戦乱に包まれたこの地も英雄達の活躍でようやく平和が訪れようとしていた。不戦を誓い合う王達であったが、時の大賢者より“誓約の宝冠”が差し出される。「この王冠を戴いた者は他国を侵略出来なくなるであろう……」――かくして、真の平和へと至ったロードスであったがその100年後、フレイムの王位継承者に禁忌を犯す者が現れる!マーモ公王の末裔ライルは、この不戦の誓いに仇なす王国に対抗すべく“永遠の乙女”の力を借りようとするのだが!?戦乱の世を駆ける王子と、伝説のハイエルフ。新たなる時代の「ロードスの騎士」を巡る冒険の旅が今、はじまる!
「BOOK」データベースより

小学生の頃、学校の図書室から借りて読んだのが、ロードス島との出会いです。
当時の時点で、戦記はすでに完結していました。
それがまさか……この歳になって続編が読めるとは……!!!
それも、100年後のロードス島が舞台だなんて。

文庫の装丁も、イラストレーターさんも、何もかもすっかり変わってしまいましたが……ロードス島はやっぱりロードス島でした。
年月を感じさせない雰囲気に、一気に懐かしさが押し寄せてきました。
まだまだ序章ですが、先は長そうな予感です。
ライルはパーンとスパークを足して割ったような“The 主人公”な感じですね。
今の所、ザイードが好きです。あとイリサ。
ローザが小ニースってのが驚きでした。
正直、小ニースって好きになれなかったキャラなので……今後どうなるのかなぁ(爆)
カノン王ロテールは今作一カッコ良かったです。亡くなってしまって非常に残念。

あと、根拠は無いのですが、パヤートはなんとなく怪しい気がします。
ラスボスになりそうなタイプかなって思いまして。

『指輪物語』のアルウェン同様、ディードが切なくって辛かったです。
パーンを含め、仲間達はとうにいなくなり、帰らずの森のほとりで、たった一人で暮らしてたなんて。
パーンとの間に子供が授からなかったと言うのも切なかったですね……以前、もし授かるなら、と望んでいましたから、尚更。
でも仮に子供がいてもハーフエルフになる訳ですから、結局ディードが一人遺されてしまうんですよね……。
どちらにせよ、不幸ではないのかもしれないけれど切ないです……。
これからの旅で、また新たな何かを見出せるといいなと願ってます!!
posted by ミクロン at 01:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月27日

あまねく神竜住まう国

『あまねく神竜住まう国』
著:荻原規子(徳間文庫)

伊豆の地にひとり流された源頼朝は、寄る辺なく、生きる希望も失いがちな少年だった。だがある日、意外な客が訪れた。かつて頼朝の命を不思議な方法でつなぎとめた笛の名手・草十郎と、妻の舞姫・糸世の運命もまた、この地に引き寄せられていたのだった…。土地神である竜と対峙し、伊豆の地に根を下ろしていく少年頼朝の姿を、ファンタジーの名手が描く異色作!
「BOOK」データベースより

『風神秘抄』の続編と言うか、スピンオフと言うか。
続編となると、勾玉シリーズの続編にもなってしまうので、ちょっと微妙な立ち位置の作品ですね。
『風神秘抄』をほとんど失念していたので、再読後に読みました。

主人公は源頼朝。
まだ子供時分なので、無力でいたいけ。
草十郎と再会出来て本当に良かった!
まさかの女装イベントは微笑ましい限りでした。

嘉丙がとっても良かったですね〜!
こういうキャラは本当に大好き。
日満も面白くて好きなのですが、今作ではあまり存在感が無くて残念。でも相変わらずで微笑ましいです。

万寿姫が相変わらず恐ろしかったです。その執念が。
『風神秘抄』でもすでに異形の者と化していましたが、今巻ではすっかり竜になってしまって。
でもこれで、完全な救いではないかもしれませんが、妄執からは解き放たれたのかな、と思いました。是非そうであって欲しいです。草十郎と糸世のためにも。

残念ながら、鳥彦王は登場せず。
でも名前が出た時は本当に嬉しかったです。
それこそスピンオフで鳥彦王のお話も読みたいなぁ。
posted by ミクロン at 22:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月22日

弥栄の烏

『弥栄の烏』
著:阿部智里(文春文庫)

山内の朝廷の実権を掌握した若宮。彼に仕える雪哉は、全軍の参謀役となった。ある日、大地震で開かれた禁門の扉の向こうに「人喰い大猿」が現れ、ついに猿と八咫烏の最終決戦が始まる。若宮は記憶と名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内の命運は―?八咫烏シリーズ第一部、堂々の完結。巻末に夢枕獏氏との対談収録。
「BOOK」データベースより

とうとう第一部が完結です。
結局電子版で購入し続けて完結……でもこれで正解だったかも。
サラッと感想を。

内容は前作『玉依姫』と重複する部分が多いです。
『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』のような、視点違いの関係でした。
今回は八咫烏サイドからのお話。
この手法、お気に入りなんでしょうか。一シリーズで二度も使うとは……。
面白ければ勿論良いのですが、この手の手法はそうとう技量がないと厳しいものと思います。
過去、同じような手法の作品を何作か読んだ事がありますが、どれもイマイチ成功しているようには思えませんでした。
ですので今回もやや冗長な印象が強くて。

ただ、大猿との決着の場面はとっても良かったです。
やっと大猿の気持ちと意図を理解できてスッキリ。
正直、若宮よりも大猿の方が遥かに魅力的でしたね(笑)
しかしこうなると八咫烏よりも猿たちの方が哀れな被害者に感じました。

今作で何がショックだったって、茂丸!!!
一番好きなキャラだったのに……お陰で雪哉の喪失感には非常〜に共感出来ましたが。
そして呪いを受けたのが澄尾だったとは……!
てっきり明留だと思っていたのでビックリ。こちらは辛うじて助かって良かったです。

ここでも雪哉無双が発揮されていましたが、イマイチ精彩を欠いたのは、やはり彼の諫め役だった茂丸が喪われてしまったからでしょうか。
前々巻での雪哉が暴走気味だったのは、今巻への伏線だったのかと気付き、納得出来ました。
ついに今巻で箍が外れ、幼さ故の苛烈さが前面に出てしまって、年相応な面が垣間見れました。
分からなくはないのですけどね、雪哉のやり方も。
猿への報復感情も満たされ、自分たちと意見を異にした者への溜飲も下げられて、周囲からは支持を得易く、手っ取り早い。
でも、主である若宮の意向を綺麗サッパリ無視している辺りが、独善的である事の一番の証左なんですけれど。
まぁ、その辺りもちゃんと理解していてなお、そうしたかったのだろうと思われますが。
この辺り、とても面白かったです。
翠寛との対比もとても分かり易くて。翠寛の再登場は嬉しかったですね〜!

個人的にオチがちょっとありきたりで肩透かしでした……。
どうして紫苑の宮が雪哉のカタルシスに繋がるのかが、イマイチ理解出来ず……う〜ん。
例え新しい命が生まれようと、山内や山神の状況は変えられず、かつ茂丸も、喪われたものも戻ってこない訳で。
ちょっと綺麗にまとめようとした感が……と思うのは、私が歳取ったせいなのかしらん。
もっと若く、純粋さと素直さを持っていれば理解できたのかも、と感じずにはいられないオチでした。ちょっと切ない。

何だかんだと文句をつけつつ、最後まで追っかけて来ました。
まだ文庫化されていない短編があるので、まとめて出して頂けると嬉しいな。
しかし、これで第一部となると……次は山内の維持または移住等のお話になるのでしょうかね。はたまた過去編……??
個人的には猿サイドのお話も読んでみたいです。すっかり大猿が気に入ってしまって。
山内自体は緩やかな滅びの道を辿りはじめた訳ですが……まだ時間的な猶予がかなりありそうですので、何とかなりそう……と暢気に思うのですが、果たして。
posted by ミクロン at 02:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする