2019年07月27日

あまねく神竜住まう国

『あまねく神竜住まう国』
著:荻原規子(徳間文庫)

伊豆の地にひとり流された源頼朝は、寄る辺なく、生きる希望も失いがちな少年だった。だがある日、意外な客が訪れた。かつて頼朝の命を不思議な方法でつなぎとめた笛の名手・草十郎と、妻の舞姫・糸世の運命もまた、この地に引き寄せられていたのだった…。土地神である竜と対峙し、伊豆の地に根を下ろしていく少年頼朝の姿を、ファンタジーの名手が描く異色作!
「BOOK」データベースより

『風神秘抄』の続編と言うか、スピンオフと言うか。
続編となると、勾玉シリーズの続編にもなってしまうので、ちょっと微妙な立ち位置の作品ですね。
『風神秘抄』をほとんど失念していたので、再読後に読みました。

主人公は源頼朝。
まだ子供時分なので、無力でいたいけ。
草十郎と再会出来て本当に良かった!
まさかの女装イベントは微笑ましい限りでした。

嘉丙がとっても良かったですね〜!
こういうキャラは本当に大好き。
日満も面白くて好きなのですが、今作ではあまり存在感が無くて残念。でも相変わらずで微笑ましいです。

万寿姫が相変わらず恐ろしかったです。その執念が。
『風神秘抄』でもすでに異形の者と化していましたが、今巻ではすっかり竜になってしまって。
でもこれで、完全な救いではないかもしれませんが、妄執からは解き放たれたのかな、と思いました。是非そうであって欲しいです。草十郎と糸世のためにも。

残念ながら、鳥彦王は登場せず。
でも名前が出た時は本当に嬉しかったです。
それこそスピンオフで鳥彦王のお話も読みたいなぁ。
posted by ミクロン at 22:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月22日

弥栄の烏

『弥栄の烏』
著:阿部智里(文春文庫)

山内の朝廷の実権を掌握した若宮。彼に仕える雪哉は、全軍の参謀役となった。ある日、大地震で開かれた禁門の扉の向こうに「人喰い大猿」が現れ、ついに猿と八咫烏の最終決戦が始まる。若宮は記憶と名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内の命運は―?八咫烏シリーズ第一部、堂々の完結。巻末に夢枕獏氏との対談収録。
「BOOK」データベースより

とうとう第一部が完結です。
結局電子版で購入し続けて完結……でもこれで正解だったかも。
サラッと感想を。

内容は前作『玉依姫』と重複する部分が多いです。
『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』のような、視点違いの関係でした。
今回は八咫烏サイドからのお話。
この手法、お気に入りなんでしょうか。一シリーズで二度も使うとは……。
面白ければ勿論良いのですが、この手の手法はそうとう技量がないと厳しいものと思います。
過去、同じような手法の作品を何作か読んだ事がありますが、どれもイマイチ成功しているようには思えませんでした。
ですので今回もやや冗長な印象が強くて。

ただ、大猿との決着の場面はとっても良かったです。
やっと大猿の気持ちと意図を理解できてスッキリ。
正直、若宮よりも大猿の方が遥かに魅力的でしたね(笑)
しかしこうなると八咫烏よりも猿たちの方が哀れな被害者に感じました。

今作で何がショックだったって、茂丸!!!
一番好きなキャラだったのに……お陰で雪哉の喪失感には非常〜に共感出来ましたが。
そして呪いを受けたのが澄尾だったとは……!
てっきり明留だと思っていたのでビックリ。こちらは辛うじて助かって良かったです。

ここでも雪哉無双が発揮されていましたが、イマイチ精彩を欠いたのは、やはり彼の諫め役だった茂丸が喪われてしまったからでしょうか。
前々巻での雪哉が暴走気味だったのは、今巻への伏線だったのかと気付き、納得出来ました。
ついに今巻で箍が外れ、幼さ故の苛烈さが前面に出てしまって、年相応な面が垣間見れました。
分からなくはないのですけどね、雪哉のやり方も。
猿への報復感情も満たされ、自分たちと意見を異にした者への溜飲も下げられて、周囲からは支持を得易く、手っ取り早い。
でも、主である若宮の意向を綺麗サッパリ無視している辺りが、独善的である事の一番の証左なんですけれど。
まぁ、その辺りもちゃんと理解していてなお、そうしたかったのだろうと思われますが。
この辺り、とても面白かったです。
翠寛との対比もとても分かり易くて。翠寛の再登場は嬉しかったですね〜!

個人的にオチがちょっとありきたりで肩透かしでした……。
どうして紫苑の宮が雪哉のカタルシスに繋がるのかが、イマイチ理解出来ず……う〜ん。
例え新しい命が生まれようと、山内や山神の状況は変えられず、かつ茂丸も、喪われたものも戻ってこない訳で。
ちょっと綺麗にまとめようとした感が……と思うのは、私が歳取ったせいなのかしらん。
もっと若く、純粋さと素直さを持っていれば理解できたのかも、と感じずにはいられないオチでした。ちょっと切ない。

何だかんだと文句をつけつつ、最後まで追っかけて来ました。
まだ文庫化されていない短編があるので、まとめて出して頂けると嬉しいな。
しかし、これで第一部となると……次は山内の維持または移住等のお話になるのでしょうかね。はたまた過去編……??
個人的には猿サイドのお話も読んでみたいです。すっかり大猿が気に入ってしまって。
山内自体は緩やかな滅びの道を辿りはじめた訳ですが……まだ時間的な猶予がかなりありそうですので、何とかなりそう……と暢気に思うのですが、果たして。
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2019年06月25日

飢え渇く神の地

『飢え渇く神の地』
著:鴇澤亜妃子(創元推理文庫)

死の神ダリヤの伝説が残る西の砂漠。十年もの間、砂漠に消えた家族の行方を探し続けている地図作りの青年カダムは、今日も探索を終えて落胆しながら帰宅した。そんな彼をレオンという怪しげな宝石商が道案内に雇いたいと言ってくる。だがカダムたちが砂漠の奥深くへと迫ったとき、そこに眠る恐るべき秘密が目を覚まし…。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞の著者の意欲作!
「BOOK」データベースより

『忘却城』を購入した際、すぐ側に並んでいて気になっていた作品でした。
タイトルが素敵で、1〜2頁読んでみても良さそうな感じだったので後日購入しました。

全体的に過不足無く、キッチリと出来ていて完成度はとても高いと思いました。
テンポも良いし、描写も分かりやすく丁寧で非常に読み易いです。設定自体も、全体の雰囲気もとっても私好みで、最後までワクワクして読めました。
ただ、完成度が高い分、個性や目新しさに欠け、印象に残りにくい作品でもありました。

異世界ファンタジーかと言われるとちょっと違うように感じました。
カダムらの生活様式等はほとんど近代そのものでしたので(イメージとしては、スペインとモロッコ。あくまでイメージですので、根拠は特にありません・苦笑)、特に異世界である必要性は無かった気がしました。現実世界にちょっぴり神話や呪術等、非科学的な要素が入ったタイプ。
ですので、現実世界にファンタジーを織り込む形の方が、より説得力があったのでは、と思ったり。

キャラクター達もそれぞれ悪くはないのですが、レオンに関してはどうしても付け足し感が否めません。どうにも不自然すぎて、すぐに正体の予想が付いてしまって……。
地味に好きなのはエシキ。序盤ではラスボス的なキャラかと思いましたが、読み進めるにつれ、非常に親しみを持てました。
勿論サールは大好きです!

神話や願い石の設定はとても面白く、どうなるのかと期待していましたが、どうも不完全燃焼だったような……。
シュトリが今も実存していたと分かった時は本当にワクワクしたのですが、結局ただそこにいるだけな感じで終わってしまったのが非常に残念でした。もっとアレコレと長い年月のお話が聞きたかったです。

身も蓋もない表現をすると、アクション抜きの、映画『インディ・ジョーンズ』のような作品でした。
この作品は小説でよりも映像の方がより真価を発揮出来る気が。
ハリウッドで映画になったら、きっととっても見応えがありそう!!
隠し部屋や願い石が生まれるシーンはとっても綺麗だと思うんですよね。
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2019年06月01日

忘却城

『忘却城』
著:鈴森琴(創元推理文庫)

忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀珈王国。過去の深い傷を抱えた青年儒艮は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない盲獄と呼ばれる牢で目を覚ます。儒艮ら六人を集めたのは死霊術師の長、名付け師だった。名付け師は謎めいた自分の望みを叶えるよう六人に命じ、叶えられた暁には褒美を与えると言うが…。第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作。
「BOOK」データベースより

ミュージカル『レ・ミゼラブル』遠征の際、ホテルで読む本を買おうと本屋をウロウロしていて、タイトルに惹かれて購入。
久しぶりの当たりでした。
普段から本は出来るだけ実店舗で買うように心がけていますが、こうした出逢いがあるのが最大の魅力だと思っています。
やっぱり本屋は素晴らしいですね〜!!

かなり綿密に創り込まれた重厚な世界観と、多種多様なキャラクター。
そして常に全体を覆う凍てつく影。
大変読み応えがありました。
恐ろしくテンポも良く、正直これは隙間時間に読む作品では無かったと後悔した程。
しっかり集中して一気に読みたくなる作品でした。
切れ切れで読んだので、正直まだ全体像を受け止めきれていない感じがしています。

忘却城=死者の霊魂が辿り着くところにある城、との事ですが、この城に関しての詳細な描写はあまりありません。
それでも何とも言えない存在感と不気味さがあり、常に意識させられます。
とにかく死者が重要な世界観ですので、常に影と冷たさがあり、雰囲気だけでも十二分に楽しかったです。

キャラクターもそれぞれしっかりしており、個性があって分かり易かったです。
お気に入りは勿論、金魚小僧!
とても哀れでとても可愛い。どういった形であれ、彼の幸せを願わずにはいられません。
象牙も健気で好感が持てるのですが、ちょっと中途半端な役所に感じました。
余談ですが、曇龍はパワーちゃん(『チェンソーマン』)のイメージで読んでいました(爆)

中華風の世界観かと思いきや、それはあくまでもベースであり、西洋風のスーツなども出てきたり、その幅は広いです。
専門用語も多いですが、それぞれ丁寧な説明があり、またそれらを冗長に感じさせない巧さもあって、苦ではありませんでした。

ただ少し難に感じたのは、構成でした。
推理小説で言う所の最後の解決シーンを盛り上げるためか、かなり序盤から意図的な説明不足が目立ちました。不足と言うよりは秘匿かな??
そのため、そもそもの儒艮達の目的も掴めず、彼らの行動の意図も図れず、共感もし辛く(その時々で断片的には出来るのですが)、ただ経過を眺めているだけになってしまいました。
各人の内面も、そういった狙いの為か描写が少ないように感じました。
眺めているだけなので先の展開に対してろくな予想も出来ず、それ故かえって解決シーンでも驚いたり、衝撃を受けたりという事が出来ず……。
その辺りがかなり勿体ないと感じました。

それでもその濃密な雰囲気とテンポの良いストーリーにドップリ浸って読めました。
世界観に浸れる、という作品は実は割と少ない気がします。
読後も半身をその世界に置いてきたような、現実から切り離されたような感覚を久しぶりに味わえました。
次回作も楽しみです♪
posted by ミクロン at 02:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月09日

謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー

『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』
著:恩田陸、はやみねかおる、高田崇史、綾崎隼、白井智之、井上真偽/文芸第三出版部・編(講談社タイガ)

「館」の謎は終わらない―。館に魅せられた作家たちが書き下ろす、色とりどりのミステリの未来!最先端を行く作家たちが紡ぎ出す6つの謎。
「BOOK」データベースより

久しぶりに恩田陸『三月は深き紅の淵を』を再読しましたら、止まらなくなり、そのまま『麦の海に沈む果実』、『黒と茶の幻想』、『黄昏の百合の骨』と立て続けに再読。
読後、水野理瀬シリーズの新作はまだ出ていないのかな〜、とAmazonで検索した結果、この本を発見した次第です。
まさか未読の短編があったとは。
短編でも嬉しい(*^v^*)
そんな訳で、感想はお目当ての『麦の海に浮かぶ檻』だけです(爆)
ネタバレ無しには語れませんので、ご注意&ご容赦を。

ウカウカと騙されました。
かつては校長も理瀬と同じ立場だったんですねぇ。
それらの競争を勝ち抜いたからこそ、あの全く隙のない完璧さを装えるのでしょう。
遂にお名前と女装の秘密が判明したのも非常に嬉しいです。
どうも恵弥を彷彿としますが。
あ、実は遠縁だったりして。
途方もない数の血縁者がいるようですし、有り得なくもない……ですよね。

そして、当時の校長。理瀬にとっての祖父。
彼は『麦の海に沈む果実』で登場していますが、かつては現校長にそっくりな感じだったんですね(正しくは現校長がそっくり、と言うべきなんでしょうけれど)。
学園の創設者たる彼の話も非常に読んでみたいです。彼が書いた赤い表紙の日記とか!
出来れば長編で!
やはり短編は物足りなーい!!(爆)

本編の続きも早く読みたいものです。
以前、連載中と何かで読んだ気がするのですが……まだ出ないのかなぁ。
首を長くして待っております!
posted by ミクロン at 21:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする