2019年07月22日

弥栄の烏

『弥栄の烏』
著:阿部智里(文春文庫)

山内の朝廷の実権を掌握した若宮。彼に仕える雪哉は、全軍の参謀役となった。ある日、大地震で開かれた禁門の扉の向こうに「人喰い大猿」が現れ、ついに猿と八咫烏の最終決戦が始まる。若宮は記憶と名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内の命運は―?八咫烏シリーズ第一部、堂々の完結。巻末に夢枕獏氏との対談収録。
「BOOK」データベースより

とうとう第一部が完結です。
結局電子版で購入し続けて完結……でもこれで正解だったかも。
サラッと感想を。

内容は前作『玉依姫』と重複する部分が多いです。
『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』のような、視点違いの関係でした。
今回は八咫烏サイドからのお話。
この手法、お気に入りなんでしょうか。一シリーズで二度も使うとは……。
面白ければ勿論良いのですが、この手の手法はそうとう技量がないと厳しいものと思います。
過去、同じような手法の作品を何作か読んだ事がありますが、どれもイマイチ成功しているようには思えませんでした。
ですので今回もやや冗長な印象が強くて。

ただ、大猿との決着の場面はとっても良かったです。
やっと大猿の気持ちと意図を理解できてスッキリ。
正直、若宮よりも大猿の方が遥かに魅力的でしたね(笑)
しかしこうなると八咫烏よりも猿たちの方が哀れな被害者に感じました。

今作で何がショックだったって、茂丸!!!
一番好きなキャラだったのに……お陰で雪哉の喪失感には非常〜に共感出来ましたが。
そして呪いを受けたのが澄尾だったとは……!
てっきり明留だと思っていたのでビックリ。こちらは辛うじて助かって良かったです。

ここでも雪哉無双が発揮されていましたが、イマイチ精彩を欠いたのは、やはり彼の諫め役だった茂丸が喪われてしまったからでしょうか。
前々巻での雪哉が暴走気味だったのは、今巻への伏線だったのかと気付き、納得出来ました。
ついに今巻で箍が外れ、幼さ故の苛烈さが前面に出てしまって、年相応な面が垣間見れました。
分からなくはないのですけどね、雪哉のやり方も。
猿への報復感情も満たされ、自分たちと意見を異にした者への溜飲も下げられて、周囲からは支持を得易く、手っ取り早い。
でも、主である若宮の意向を綺麗サッパリ無視している辺りが、独善的である事の一番の証左なんですけれど。
まぁ、その辺りもちゃんと理解していてなお、そうしたかったのだろうと思われますが。
この辺り、とても面白かったです。
翠寛との対比もとても分かり易くて。翠寛の再登場は嬉しかったですね〜!

個人的にオチがちょっとありきたりで肩透かしでした……。
どうして紫苑の宮が雪哉のカタルシスに繋がるのかが、イマイチ理解出来ず……う〜ん。
例え新しい命が生まれようと、山内や山神の状況は変えられず、かつ茂丸も、喪われたものも戻ってこない訳で。
ちょっと綺麗にまとめようとした感が……と思うのは、私が歳取ったせいなのかしらん。
もっと若く、純粋さと素直さを持っていれば理解できたのかも、と感じずにはいられないオチでした。ちょっと切ない。

何だかんだと文句をつけつつ、最後まで追っかけて来ました。
まだ文庫化されていない短編があるので、まとめて出して頂けると嬉しいな。
しかし、これで第一部となると……次は山内の維持または移住等のお話になるのでしょうかね。はたまた過去編……??
個人的には猿サイドのお話も読んでみたいです。すっかり大猿が気に入ってしまって。
山内自体は緩やかな滅びの道を辿りはじめた訳ですが……まだ時間的な猶予がかなりありそうですので、何とかなりそう……と暢気に思うのですが、果たして。
posted by ミクロン at 02:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする