2019年06月01日

忘却城

『忘却城』
著:鈴森琴(創元推理文庫)

忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀珈王国。過去の深い傷を抱えた青年儒艮は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない盲獄と呼ばれる牢で目を覚ます。儒艮ら六人を集めたのは死霊術師の長、名付け師だった。名付け師は謎めいた自分の望みを叶えるよう六人に命じ、叶えられた暁には褒美を与えると言うが…。第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作。
「BOOK」データベースより

ミュージカル『レ・ミゼラブル』遠征の際、ホテルで読む本を買おうと本屋をウロウロしていて、タイトルに惹かれて購入。
久しぶりの当たりでした。
普段から本は出来るだけ実店舗で買うように心がけていますが、こうした出逢いがあるのが最大の魅力だと思っています。
やっぱり本屋は素晴らしいですね〜!!

かなり綿密に創り込まれた重厚な世界観と、多種多様なキャラクター。
そして常に全体を覆う凍てつく影。
大変読み応えがありました。
恐ろしくテンポも良く、正直これは隙間時間に読む作品では無かったと後悔した程。
しっかり集中して一気に読みたくなる作品でした。
切れ切れで読んだので、正直まだ全体像を受け止めきれていない感じがしています。

忘却城=死者の霊魂が辿り着くところにある城、との事ですが、この城に関しての詳細な描写はあまりありません。
それでも何とも言えない存在感と不気味さがあり、常に意識させられます。
とにかく死者が重要な世界観ですので、常に影と冷たさがあり、雰囲気だけでも十二分に楽しかったです。

キャラクターもそれぞれしっかりしており、個性があって分かり易かったです。
お気に入りは勿論、金魚小僧!
とても哀れでとても可愛い。どういった形であれ、彼の幸せを願わずにはいられません。
象牙も健気で好感が持てるのですが、ちょっと中途半端な役所に感じました。
余談ですが、曇龍はパワーちゃん(『チェンソーマン』)のイメージで読んでいました(爆)

中華風の世界観かと思いきや、それはあくまでもベースであり、西洋風のスーツなども出てきたり、その幅は広いです。
専門用語も多いですが、それぞれ丁寧な説明があり、またそれらを冗長に感じさせない巧さもあって、苦ではありませんでした。

ただ少し難に感じたのは、構成でした。
推理小説で言う所の最後の解決シーンを盛り上げるためか、かなり序盤から意図的な説明不足が目立ちました。不足と言うよりは秘匿かな??
そのため、そもそもの儒艮達の目的も掴めず、彼らの行動の意図も図れず、共感もし辛く(その時々で断片的には出来るのですが)、ただ経過を眺めているだけになってしまいました。
各人の内面も、そういった狙いの為か描写が少ないように感じました。
眺めているだけなので先の展開に対してろくな予想も出来ず、それ故かえって解決シーンでも驚いたり、衝撃を受けたりという事が出来ず……。
その辺りがかなり勿体ないと感じました。

それでもその濃密な雰囲気とテンポの良いストーリーにドップリ浸って読めました。
世界観に浸れる、という作品は実は割と少ない気がします。
読後も半身をその世界に置いてきたような、現実から切り離されたような感覚を久しぶりに味わえました。
次回作も楽しみです♪
posted by ミクロン at 02:00 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする